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46 聖女への憎しみ アンジェリカ視点

お父様は私のためなら何だってしてくれた。



正妻である王妃様さえも私の一言で消してくれたんだから。



私がお父様に王妃様を消してほしいとお願いしたあと、すぐに王妃様は亡くなった。母親が死んだことによる悲しみからか、お兄様は一週間ほど部屋から出てこなくなった。そして再び姿を現わしたときには、ゲッソリとやつれていて元の美貌は見る影も無かった。



(私を苛つかせるからよ!ざまあみろ!)



表向きは「不慮の事故」ということになっている王妃様。だけど本当は違う。



お父様の息のかかった侍女に階段から突き落とされたのだ。しかし、その場にいた侍女二人が王妃様の不注意による事故だったと証言していることから王妃様の死は事故として処理された。



そのことを聞いた私は自室で一人ほくそ笑んだ。



(ふふふ・・・お母様に夫からの愛を奪われたうえに最後はその夫から殺されてしまうだなんて本当に可哀相!)



別に王妃様に何かされたわけではなかったが、彼女のことを考えると何故だか笑いがこみ上げてくる。夫から愛されない王妃。それはそれは惨めな人生だったのだろう。可哀相で仕方がない。







それから数年後。



私は王都にあるブティックに寄っていた帰り、たまたまある人物を発見した。



(・・・あら?)



私はその光景に目を奪われた。



「聖女様!また遊びに来てね!」



「もちろん!」



「またね!」



「みんな、またね!」



小さな子供たちに囲まれてとびきりの笑顔を浮かべていたのはこの国の聖女であるソフィアだった。



―聖女ソフィア



平民であるにもかかわらず、光魔法を発現させたため聖女として王宮で暮らすようになった女。私も存在自体は知っていたが、平民の女など相手にする価値も無いと思っていたため興味が無かった。



しかし、目の前のその光景は私を苛つかせた。



(・・・・・・気に入らないわ)



それから私はすぐに王宮へと戻っていつものようにお父様にお願いをした。



「お父様、お願いがあるの」



私はお父様に今度は聖女ソフィアを消してほしいと告げた。



しかし―



「・・・それは無理だなぁ、アンジェリカ」



「!?どうしてよ!!!」



何と初めてお父様にお願いを断られたのである。お父様は私のお願いに困ったような顔をしていた。



「お前も知っているだろう?この国において聖女殺しは重罪だということを」



「だったら他の誰かにやらせればいいじゃない!今までだってそうだったわ!」



しかし私がどれだけ説得しても、結局お父様が首を縦に振ることはなかった。



(ああ、もうムカつくわね!)



お父様は法を犯すことというよりかはどちらかというと聖女を殺したことによる”呪い”の方を恐れているように見えた。権力を得ても臆病なのは変わらないらしい。



(ハァ、この愚王が!)



お父様はお世辞にも優秀な王とは言えない。ハッキリ言ってお父様が王という地位に就けたのも奇跡だ。お父様は裏で貴族たちに無能だと言われているが本当にその通りだなと思う。



しかし、私はそれで諦めるような女ではなかった。むしろ初めて自分の思い通りにならなかったということで私の心は余計に燃え上がった。



それから私はあの聖女を苦しめたいというその一心で行動した。まずは私の息のかかった人間をあの女の侍女として送り込んだ。そしてあの女の授業には平民を心底嫌っている人間を講師としてあてがった。



そして、極めつけはあの女が心底惚れ込んでいた婚約者のアレックスを奪ってやった。あのときの爽快な気持ちは今でも忘れられない。私とアレックスが個室でキスをしているところを見せつけたのも私だ。



聖女はきっとたまたまだと思っているだろうがあれは私が仕組んだことだった。あらかじめ聖女のスケジュールを調べておいた私は近くの部屋にアレックスを誘い込んだのだ。信じられないものを見るかのような目で私とアレックスの密会を見ている聖女のあの顔。最高に気分が良かった。



散々苦しめた後に婚約者を奪ってあの女に完全勝利したと思った。それなのに―







そこで私は現実に戻った。



(あの女・・・思えば最初から本当に鼻につくヤツだったわ・・・)



あの女だけは私の手で殺さなければ腹の虫が収まらなかった。平民の女一人に心を乱されて私の自尊心はもうズタボロだ。それから私はあの女をこの世から消す方法を考えた。



(お父様にお願いしてもきっと断られるだけだわ・・・臆病なお父様は呪いなんてそんな馬鹿げたものを恐れているんだもの)



そう、今回ばかりはお父様を使うことも出来ない。無能で臆病なあの父はどうせ私の願いを叶えてはくれないだろう。だからといって自分で手を下してあの女の汚い血が付くのも嫌だった。



(どうすれば・・・どうすれば・・・あの女を消せるの?)



私は食事も摂らずに自室にこもって考え続けた。気付けば夜になっていた。



(あ・・・そうだわ・・・)



そこで私はあることを思い付いた。



「ふふふ・・・ふふふふふ・・・」



そのことを思いついた私は、こみ上げてくる笑いを抑えることが出来なかった。



(そうだわ、この手があったじゃない)



それから私はすぐに侍女を呼びつけて行動に移した。



(使える駒は使っておかないとね・・・)



待ってなさい、聖女ソフィア。



私がアンタを地獄に堕としてあげるから―




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