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王太子殿下、フローレス公女と別れた私はまたまたある人物と偶然出会った。



「あれ・・・ダグラス公子様?」



「・・・お前」



そう、私が出会った人物とはダグラス公子だった。



(フローレス公女とたまたま出会った後にアンジェリカ王女殿下とたまたま出会って、その後に王太子殿下と会って今度はダグラス公子に会うだなんて・・・)



何だか今日は高貴な身分の方たちによく出会う日だ。運が良いのか悪いのかよく分からない。しかし、こうして会った以上無視するというわけにはいかない。



「お久しぶりです、公子様」



「奉仕活動からそんな経ってないだろ」



「あら、そうでした?」



私は挨拶をしながらダグラス公子をじっと見つめた。あの奉仕活動からダグラス公子は何だか雰囲気が一変したような気がする。



「公子様、アンジェリカ王女殿下に会いに来られたのですか?」



「いや、」



私の問いにダグラス公子は少しの間黙り込んだ。気まずそうに視線を逸らしている。



「・・・?」



そして、彼は私を真っ直ぐに見つめるとゆっくりと口を開いた。



「―アンジェリカにはもう会わないことにした」



「え・・・」



そう言ったダグラス公子の目には揺るがない決意が秘められていた。アンジェリカ王女殿下に対してまだ未練のあったあの頃とはまるで違う、力強い瞳。覚悟を決めたかのような目だった。



その言葉の意味が分からなかった私は彼に尋ねた。



「あ、会わないってどういう・・・」



「そのままの意味だ。俺はもうアンジェリカとは二度と会わない」



「ど、どうしてそんな急に・・・」



(二度と会わないだなんて一体どうして・・・)



狼狽える私に、ダグラス公子は淡々と理由を話し始めた。



「アンジェリカと会ったところで辛くなるだけだし、俺もいい加減前に進まないといけないからな」



「公子様・・・」



そう口にしたダグラス公子は、どこか晴れ晴れとした顔をしていた。少し前の私とよく似ている。どうやら彼はもう完全に王女殿下のことは吹っ切れたようだ。



それからダグラス公子は少し恥ずかしそうな顔をして言った。



「お前との奉仕活動から帰った後、今までの自分を見つめ直してみたんだ。そこでようやく気付いた。今のままじゃダメだって」



「・・・」



「そういえば、アンジェリカにかまけて自分のこと全然だったなってことに気付いたんだ」



「・・・!」



そこまで言って彼はフッと微笑んだ。前見た悲しげな笑みではなく、気持ちのいい笑顔だった。こんなにも穏やかなダグラス公子の顔は初めて見るかもしれない。



「俺は今日、父上の仕事の手伝いをしに王宮に来た」



「まぁ、お父君の・・・」



「あぁ、だがアンジェリカに会うつもりはない。これからは立派な後継者になるための勉学に励もうと思ってる」



「まぁ・・・!」



これが本当にあのアルベール・ダグラス公爵令息なのだろうか。とてもじゃないが、初めて出会ったときのダグラス公子と同一人物だとは思えない。



そして彼は私を見てニヤリと笑いながら言った。



「次にアンジェリカと会うときは幼馴染ではなく臣下としてだ」



「公子様・・・」



彼のその言葉に、何だか涙が出そうになった。弟の成長を喜ぶ姉のような気分になった。まぁ、ダグラス公子の方が私より年上なのだが。



「成長しましたね、公子様」



「何でそんなに上から目線なんだよ」



ダグラス公子はそんな私に不満そうな顔をしていたが、私にとってはそんな彼の成長が嬉しくて仕方がない。彼と私は境遇が似ていたから。ダグラス公子が少し前の私と同じように完全に過去と決別出来たようで本当に良かった。



「ご両親や付き人の方にはもうそのことをお伝えしましたか?」



「ああ、みんな泣いて喜んでいた」



「本当に良かったです、公子様。奉仕活動に参加した甲斐がありましたね!自分自身を褒めてさしあげてください!」



「・・・」



私が笑顔でそう言うと、ダグラス公子は目を伏せてしばらくの間黙り込んだ。



「・・・?」



私がそんな彼の様子を不思議に思ってじっと見つめていると彼が突然青い瞳を私に向けた。



「―聖女」



「はい?」



ダグラス公子の青い瞳と視線が交わった。私の気のせいだろうか、彼の冷淡な瞳が今は冷たく感じられなかった。



(聖女なんて初めて呼ばれたかも・・・)



ダグラス公子はその瞳に私の姿を映したまま重い口を開いた。



「この前のことなんだが―」



「―ソフィア嬢!!!」



そう言いかけたとき、遠くから声が聞こえた。驚いて後ろを振り返ってみると―



「あれ、王太子殿下・・・?」



「・・・」



私とダグラス公子を見た王太子殿下がツカツカとこちらに歩いて来た。何故か息を切らしながら。そして彼は私たちのすぐ隣まで来るとダグラス公子に鋭い視線を向けた。



「ダグラス公子、ソフィア嬢に一体何の用だ?」



「あ、いや、俺は・・・」



「あ・・・」



どうやら殿下はダグラス公子がまた私に何か酷いことをしているのではないかと勘違いしているらしい。これは流石にダグラス公子が可哀相だ。あの頃はともかく、今は別に彼に何かされたわけではないのだから。そう思った私は誤解を解くために殿下の前に出た。



「殿下、公子様とは少しお話をしていただけです」



「お話?」



それでもまだ怪訝そうな顔をする殿下に私は言った。



「はい、前に公子様と二人で教会の奉仕活動を行っていたことがありましてそのときのお話を・・・」



「二人で奉仕活動だと・・・?」



私のその言葉に王太子殿下が顔をしかめた。何故か殿下が不機嫌そうだ。



(あれ、どうしてそんな顔をするんだろう・・・?)



今の発言のどこに怒る要素があるのだろうか。彼がそのような顔になる意味がどうしても分からなかった。



そんな王太子殿下を見たダグラス公子が口を挟んだ。



「・・・俺はそろそろ失礼した方が良さそうですね」



「あっ、公子様」



私は彼を引き止めようとしたがダグラス公子は素早く殿下に頭を下げた。



「王太子殿下、聖女様。失礼いたします」



「・・・」



そう言いながら去って行ったダグラス公子の後ろ姿を王太子殿下は何か言いたそうな表情でじっと見つめていた。そんな彼を見ていた私は思った。



(何だか今日の殿下・・・いつもと違うな・・・)



一体どうしたというのだろうか。いつも冷静な彼がこんな姿を見せるだなんて。



私はそんな殿下に困惑した。




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