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39 元婚約者の暴挙

そして馬車は王宮へと到着し、私はダグラス公子にお礼を言って彼と別れた。疲れていた私はすぐに自分の部屋へと戻ろうと重くなった足を何とか動かして自室への道を歩いていた。



歩きながらダグラス公子と共にした三日間を振り返ってみる。



(何だか新鮮な三日間だったなぁ・・・)



ダグラス公子も今回の奉仕活動を通して色々と学ぶことが出来ただろうし、結果的にそれが彼の成長にも繋がった。そして彼の意外な一面を知ることも出来た。たまにはこういうのも悪くないだろう。



そんなことを考えていたそのとき突然近くにあった部屋から誰かの腕が飛び出してきて、私を掴んだ。



「キャッ!!!」



驚いた私は思わず悲鳴を上げた。



振りほどこうにも力が強すぎて敵わない。一体誰がこんなことをしているのか見当もつかなくて恐ろしさで体が震えた。



(嫌ッ!怖い!)



そして私はそのまま部屋へと引きずり込まれた。私は怯えながらも一言文句を言ってやろうと、顔を上げて自身の腕を掴んでいる人物を見た。



「い、一体何・・・・・・・・・・って、アレックス?」



「ソフィア」



何と私を部屋に連れ込んだのはアレックスだった。



「アレックス、やめて。放して」



そう言いながら暴れてみるが、私を掴んでいる彼の腕はビクともしない。



(何でこんなこと・・・!)



そんな彼の姿を見て怒りがこみ上げてくる。この前王太子殿下といたときもそうだったが、何故婚約を解消した後になってこうも私に関わってくるのだろうか。婚約していた頃はむしろ私のことを避けていたではないか。



私は怒り任せにアレックスを怒鳴りつけた。



「一体何のつもり!?あなたは王女殿下の婚約者でしょう!?こんなとこ誰かに見られたら・・・」



「ソフィア、お前王太子殿下とどんな関係だ?」



しかし彼は私の話を全く聞かずにそんなことを尋ねてきた。



「え、王太子殿下・・・?」



「・・・いつの間に王太子殿下とあんなに仲良くなったんだ?」



そう言ったアレックスは、切羽詰まったような顔をしていた。



(あれ、そういえば前も似たようなこと言ってたような・・・)



王太子殿下と二人でいたあのときも同じような質問を殿下相手にしていたことを思い出した。何故アレックスがそんなことを気にするのかよく分からない私は、返答に困った。



「・・・」



黙り込む私を見て、アレックスの顔がさらに険しくなった。



「・・・王宮の侍女が言ってた。王太子殿下があんなに誰かを気にかけるのは初めてだって」



「え?」



「王宮にいる侍女たちは皆王太子殿下とお前が恋人同士だと思ってる」



アレックスのその声には、僅かな怒りが滲んでいた。何故そのことについてアレックスが怒っているのかは分からないが、それはもう彼には関係の無いことだ。



(ハァ・・・面倒くさいけどとりあえず今は誤解を解く方が先かな・・・)



王太子殿下の評判に傷を付けるわけにはいかないと思った私はひとまず彼との噂を否定した。



「私と王太子殿下はそんな関係じゃないわ」



「本当か?少なくとも王太子殿下はお前のことを・・・」



私のその言葉が信じられないのか、彼は食い気味に尋ねた。



「アレックス、どうしてそんなことを聞くの?」



「・・・」



私のその言葉に彼はグッと黙り込んだ。何かを我慢しているかのような顔だった。こんなに余裕の無い彼は初めて見るかもしれない。



「・・・まさか、俺と婚約者だった頃から王太子殿下と関係があったのか?」



「・・・何を言っているの?」



アレックスの問いを否定も肯定もしなかった私を見て、確信を得たかのように彼が声を荒げた。



「だからあんなにもあっさり身を引いたのか!?あのとき既に王太子殿下と付き合ってたから!」



「・・・何ですって?」



アレックスのその発言に、私もついに我慢の限界を迎え声を上げた。



「あなたじゃないんだからそんなことするわけないじゃない!」



「何だと!?」



私の言葉にヒートアップしたかのように彼の口調がさらに荒々しくなった。しかし私もここで引くような人間ではない。あの一件は私には何の非も無いのだから。



「私はあなたとは違う!」



「俺のことを侮辱しているのか!?」



アレックスは私の肩を強い力で掴んだ。あまりの痛みに顔が歪みそうになる。しかし私はそんな状況に陥ってもなお至って冷静に、そしてハッキリと言った。



「浮気したあなたにそんなことを言われる筋合いはないって言ってるのよ!」



「・・・ッ」



私がそう言った途端、彼は大人しくなった。どうやら浮気をしたという自覚があったようだ。アレックスが平静を取り戻したのを確認した私はこれ以上事を荒立てないように彼の腕を自分の体からそっと引き剥がした。



「・・・王太子殿下との件は完全に誤解よ。私たちは恋人同士でも何でもないから」



「・・・」



私のその言葉にアレックスは何かを考えるような素振りで黙り込んだ。私はそんな彼にキッパリと告げた。



「私とあなたはもう何の関係も無いんだから、これ以上の干渉はやめて」



「ソフィア・・・」



”何の関係も無い”



至極当然のことであるはずなのに、何故だか彼はそのことにショックを受けたかのような顔をした。私たちの関係をそんな風にさせたのはアレックスの方だ。



「これからは私が誰と関わろうと口出ししないで」



「ソフィア、俺はッ・・・」



「前に王太子殿下も言ってなかった?あなたが私について口出しする権利はないって」



私はまだ何か言いたそうにしているアレックスの言葉を遮った。これ以上は聞きたくなかったからだ。私が彼と話すことなど何もない。



「ッ・・・」



殿下相手に完全に言い負かされたあのときのことを思い出したのだろうか。アレックスは悔しそうな顔をした。



(王太子殿下に言われたことが相当効いていたみたいね・・・)



しかし私はアレックスのことを可哀相だとは思わない。あのとき無礼な行動をしたのは間違いなく彼の方だったのだから。



「分かったなら二度とこんなことしないで」



そして私は放心状態になっているアレックスを一人取り残し、部屋から出て行った。




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