死
慎ましく生きてきた、はずだ。だから、この下腹部の痛みには納得がいかない。
「あいつっ…絶対許さねぇ…ふざけんな…ここまでやるかよ…正気じゃねぇ…っああ痛い痛い痛い痛い痛いぃぃ!!」
俺の中を流れていた血は内圧にしたがって破れた血管からあっさり出ていった。19年間もずっと一緒だったのに随分酷薄じゃないか。
実際自分がどれだけ死に近づいているのかなんてわからない。でもしゃれにならない量が出ていることは確かだ。パニックが止まらない。
ここまで落ちた時、アラタはどうしようもなく運が悪かった。落ちた拍子に側に落ちていた鉄屑で腹を切ったのだ。
人一倍体の脆い自分の皮膚はあっさり裂け、死が明確に近づいてきているのを感じる。他にも身体中に負った裂傷とかすり傷で
「あっ、絆創膏と回復薬はどこだっやばいまじで死ぬっああ」
既に機能を停止した遺跡内は真っ暗だ。背負っていたリュックサックはどこかに行ってしまった。
感覚が失われてきた。温度は感じないが、体は震えているように感じる。でも頭の中はポカポカして、幸せな感じだ。ナンダコレ。本格的にヤバい。
死を目前にし、潰れかけた虫のように無様に痙攣していた少年は、真っ赤な視界の中で最後に光を見た気がした。
面白いと思っていただけたらそれだけで嬉しいです。
ずうずうしいですがいいねとかコメントとかもらえるとパソコンの前で泣いて転んで喜びます。