Σ(゜д゜lll) 宝物庫への侵入者(その五)
素早く移動して、クーは金色兜の右腕をつかんだ。
力いっぱいにねじり上げようとすると、相手が蹴りで反撃してくる。
クーは体の柔軟性を活かして、その蹴りを回避した。つかんでいる右腕は放さない。
ここでキナコが本命の攻撃を仕掛ける。
矢のような鋭い蹴りを、金色兜の胴に叩き込んだ。『空中弓蹴り・あんこプッシュ』である。
キナコの蹴りが命中するタイミング。そこでクーは、相手の右腕から手を放した。
二人の連係によって、金色兜は宝物庫の方へと吹っ飛んでいく。
クーは追い打ちをかけようとした。
ところが、背筋を中心に悪寒が走る。本能が追撃を拒否してきた。
キナコの方も同じらしい。二人とも前へは飛び出さなかった。
宝物庫の扉に叩きつけられる金色兜。その口からは、紫色の気体が漏れ出している。
「あれは毒だね」
気体の正体を、クーは一瞬で見破った。
毒の量はそこまで多くない。このくらいの距離をあけていれば安全だろう。追撃をしなくて正解だった。
(さて、どうしようかな)
毒を使ってくる相手と、クーはこれまで戦ったことがない。
真っ先に思いつく対処法は「遠距離攻撃」だ。
(でも、ぼくが使える遠距離攻撃は、手裏剣くらいなんだよね)
牽制には使えても、必殺の手段としては心もとない。スティンクルが使う『光収束』とは違うのだ。また、テテルの爪楊枝のように、百発百中というわけでもない。
そして、クーと同じく、キナコも接近戦で勝負するタイプだ。毒を使う相手とは、相性が悪い。
(さて、どうしようかな)
懐には手裏剣がある。
それを取り出そうか考えている間も、クーは金色兜から目を離さなかった。
相手の口から出ていた紫色の気体が、どんどん薄くなっていく。
やがて止まると、
「そこの忍者娘」
金色兜が今度は言葉を吐いてきた。
「お前は七〇点だ。殺すには惜しい」
勝手に点数をつけてくる。
(七〇点?)
何の点数だろうか。クーは警戒しながら考える。
次に金色兜はキナコに向かって、
「戦闘に関する評価なら、お前は八〇点だ」
キナコの方が点数は上だが、クーに不満はない。先ほどの攻防だけで判断するなら、そうなるのが当然だろう。キナコの点数はもっと高くてもいいくらいだ。
「しかし、大きな減点がある」
と金色兜は続けた。
「マイナス九九九九九九点だ。よって、殺す価値しかない。だんご娘よ、おまえは死ね」




