Σ(゜д゜lll) 宝物庫への侵入者(その二)
銀色兜の二人が瞬時に反応してくる。
しかし、それでは遅い。クーの空手チョップが、手前にいた敵の首筋をとらえる。延髄への、正確かつ強力な一撃だ。
さらに、奥にいた敵へと、クーは蹴りを放つ。
これは避けられてしまったが、それも計算の内だ。
相手の注意がクーに向いたのを見て、今度はキナコが動く。
クーの蹴りをかわした敵に突進した。
カボチャ兜を両手でつかむと、突進してきた勢いそのままに、相手の後頭部を壁に叩きつけた。『突進打突・ごまクラッシュ』!
だが、壁に叩きつけた直後に、相手の反撃がくる。キナコは後方にジャンプして、その反撃を回避した。
そこにクーも合流する。
今の一連の攻撃で、敵の数を減らすことはできなかった。この銀色兜たち、それなりに強い。
でも、自分たちが負けることはないだろう。
クーの空手チョップと、キナコの『突進打突・ごまクラッシュ』。二人の攻撃が、いくらか効いているようだ。相手の体はどちらも少しふらついている。
「奥の手を使え」
宝物庫の方から、さっきの声がする。
ただし、その雰囲気は一変していた。今や凶悪さを隠そうともしていない。
クーは警戒レベルを跳ね上げる。
目の前の二人は大したことがない。
しかし、この声の主は確実に強い。一対一なら、おそらく負ける。
(でも、こっちにはキナコもいるし)
これが決め手となって、「ここから逃げる」という選択肢がかき消えた。
銀色のカボチャ兜をかぶった二人組が突然、何かを取り出す。
(エナジードリンクの缶?)
次の瞬間、その缶についている企業ロゴが、クーの目に留まる。
(あれは・・・・・・)
ゾーンビルド先生は学校の教師になる前、「正義のヒーロー」をしていたらしい。その時のことを、クーのクラスでだけ、ほんの少し語ったことがある。
ゾーンビルド先生が戦っていた組織は、資金源の一つとして、ダミー会社を使って「違法なエナジードリンク」を販売していた。人間を殺戮マシーンに変える『悪魔の飲料』だ。
激しい戦いの末、ゾーンビルド先生によって組織は壊滅。『悪魔の飲料』はすべて、この世界から消えた。いや、消えたはずだった。
クーの記憶が正しければ、あの缶についている企業ロゴは、その組織が使っていたダミー会社のものだ。ゾーンビルド先生がクーたちのクラスで、黒板に書いたロゴマークと同じ。
そのダミー会社はすでに倒産しているはずだが、もしもあれが本当に『悪魔の飲料』なら・・・・・・。
カボチャ兜の目の部分、そこからエナジードリンクを流し込む敵の二人組。かなり豪快で独特な飲み方だ。
クーは銀色兜たちから目を離さない。
どうやら、あの『悪魔の飲料』は本物のようだ。相手の殺気が数段強くなった。筋肉が異様にふくれ上がっていく。




