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カボチャが値上げ、怒りのシンデレラ (Pumpkin price hike. Cinderella gets angry.)  作者:
第七章

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Σ(゜д゜lll)  宝物庫への侵入者(その一)

 クーはキナコと小声でみじかく会話する。


 宝物ほうもつ偵察ていさつが目的なので、基本的には兵士たちとかかわり合いたくない。


 しかし、この状況じょうきょうは異常だ。ほうっておくわけにもいかないだろう。


 二人は無言でうなずき合うと、音を立てずに兵士に近づいた。


 全身をなわしばられた兵士はどちらも、気をうしなっているだけで、いのち別状べつじょうはなさそうだ。


 さすがに、ここで意識いしきを回復させるのはやめておく。「なぜ、この場所にいるのか?」などと質問されたくない。


 兵士たちをこんな風にした相手は、この廊下ろうかの先にいるようだ。


 かどの向こう側から、クーは邪悪じゃあく気配けはいを感じていた。キナコも同様どうようらしい。


 この先にあるのはおしろ宝物ほうもつだ。そこになぞの相手がいる。見張みはりの兵士たちがおそわれていたことから考えて、その目的は自分たちと同じだろう。


「どうする?」


 キナコが小声でたずねてきた。


 クーは少しだけ考える。


 この先にいるのはおそらく、宝物ほうもつへの侵入者しんにゅうしゃだ。


 ここでもしも、今すぐおしろの人をさがしにもどって、「宝物庫あそこへんまどに変な明かりが見えました」などと言えば、その侵入者しんにゅうしゃつかまえることができるかもしれない。


 しかし、それをするのは気が進まなかった。


 そのあとはおそらく、宝物ほうもつ警備けいびが強化される。今夜はずっと、その警備けいび体制が維持いじされるにちがいない。クーたちが宝物ほうもつ侵入しんにゅうするのもむずかしくなってしまう。


 キナコたちのだれかが王子と結婚けっこんする、それが無理な場合は、「宝物ほうもつ侵入しんにゅうしての一攫いっかく千金せんきん」こそが、『退学たいがく』を阻止そしするための唯一ゆいいつの手段だろう。


(これには、ぼくやスティンクルだけじゃない。テテルやリプリスの将来しょうらいもかかっている)


 なので、ここでの判断はんだんは、


「進もう。ぼくたちで侵入者しんにゅうしゃ撃退げきたいする」


「そうこなくっちゃ♪」


 今の二人の格好かっこうは、ドレス姿ではなかった。舞踏会ぶとうかいの会場を出たあと、クーの魔法でおそろいの忍者にんじゃ装束しょうぞくになっている。黒い忍者にんじゃ装束しょうぞくの背中には、「赤い月夜に、える金色こんじきりゅう」が大きく刺繍ししゅうされていた。


 かどの向こう側にいる何者かの気配けはい、それをクーは注意深くさぐってみる。


 どうやら、侵入者しんにゅうしゃは一人じゃないみたいだ。


(三人いる)


 声を出せば相手に聞こえるかもしれないので、クーはゆびを立てて、その人数をキナコに知らせた。


 さらに、ゆかに二種類の硬貨コインならべる。


 金色きんいろ硬貨コインが二枚。これは自分たちの現在地だ。


 で、銀色ぎんいろ硬貨コインが三枚。相手の位置である。二枚はこちらに近い場所に、一枚は少し遠くに置いた。


 ウルフェニックス先生の授業じゅぎょうならった、「声を出さずに戦況せんきょうつたえる方法」の一つだ。有名な「サバイバルじゅつの本」に書いてある内容らしい。


 この説明でうまくつたわるかどうか、クーは不安だったけれど、どうやらキナコは理解してくれたみたいだ。力強くうなずいてくる。


 こっちは二人。相手は三人。


 まずは奇襲きしゅうで一人をたおす。そうすれば二対二だ。


 しかし、クーの目論見もくろみ通りにはいかない。


「いるな。ネズミが一匹いっぴき


 かどの向こう側、それよりもさらにおくから、女性の低い声がした。声をひそめているのではなく、これが地声じごえだと思われる。


(たぶん、こいつがリーダーかくだ)


 クーは直感ちょっかんした。相手三人の中で、こいつが一番遠くにいる。


駆除くじょしろ」


 その指示しじで他の二人が動いた。クーたちの方に、二つの気配けはいが近づいてくる。


 直前にリーダーかくが言ったのは、「ネズミが一匹いっぴき」だった。たぶん、キナコの気配けはいにだけ気づいたのだろう。


 しかし、実際じっさいには、こっちは二人だ。クーの存在はばれていない。よって、不意ふいちは可能。


 金色きんいろ硬貨コインの片方を、クーはさっとゆびで動かした。


 ――廊下ろうかの真ん中に移動して。


 だまってうなずくキナコ。その指示しじしたがってくれる。


 一方で、クーはかべ沿って少しだけ前へと進んだ。


 その直後に、かどの向こう側から、相手二人が姿をあらわす。


 どちらも銀色ぎんいろかぶとをかぶっていた。


 カボチャそっくりの形をしたかぶとで、悪魔あくまのような目鼻めはながついている。その頭頂部とうちょうぶには、リボンをいたフォークがさっていた。


 頭部全体をおおかぶとなので、相手の顔はわからない。


 服装ふくそう迷彩めいさいがらのジャージ。


 二人とも女だ。


 相手はかどがった瞬間、その視線をキナコに向けた。廊下ろうかの真ん中に立っているのだから、普通はそうする。自然しぜんな反応。


 この瞬間をクーはねらっていた。


 壁際かべぎわからいきおいよく飛び出す。相手にとっては、死角しかくとなる位置からの奇襲きしゅうだ。


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