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カボチャが値上げ、怒りのシンデレラ (Pumpkin price hike. Cinderella gets angry.)  作者:
第七章

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Σ(゜д゜lll)  そこで何をしている!

 少し前に、金髪の王子と銀髪の執事しつじは大広間をけ出していた。


 二人は仮面かめんはずすと、しろの中をいそぎ足で移動する。


 すると、通路の先にあやしい人影ひとかげを発見した。


 執事しつじが声を出さずに、目で王子にたずねる。


(どうします?)


 つね日頃ひごろから行動をともにしているので、こういう形式かたちでの意思いし疎通そつうが可能だ。


(ここはまかせろ)


 そう返すと王子は、いきなりさけんだ。


「そこで何をしている!」


 相手は一瞬びくっとしてから、王子たちがいるのとは反対方向に逃走とうそうした。


 しかし、無駄むだ努力どりょくだ。この先は行き止まりになっている。


 こうしてかべの前へと追いめられた不審ふしん人物じんぶつげるのをあきらめて、へらへらした笑顔をこちらに向けてきた。


「よ、よおっ。こんなところで奇遇きぐうだな」


 隣国りんごくのリチャードだ。


 普通なら、この場にいる人物ではない。今夜の舞踏会ぶとうかいの『招待状しょうたいじょう』を送っていないのだ。


 というのも、今夜の舞踏会ぶとうかいには重要な目的がある。この国の王子として、結婚けっこん相手あいてを決めるのだ。そういう「しきたり」になっている。


 そして、リチャードはおんなき。邪魔じゃまされたくないので、今夜の舞踏会ぶとうかいにはばなかった。


 ところが本日、そのリチャードから手紙がとどいたのだ。「今夜の舞踏会ぶとうかいかならず参加してやる」という手紙。まるで犯行はんこう予告よこくだ。


 そんなリチャードが今、目の前にいる。


 王家のカボチャばたけに流れ星が落ちたけんなど、色々と質問したいことはあった。あれでカボチャにかなりの被害ひがいが出た、と聞いている。


 だが、今回は不問ふもんにしよう。王家のカボチャが全滅ぜんめつしたわけではないみたいだし、カボチャがなければないで、ナスやピーマンの料理でおぎなえばいいのだ。


「とりあえず、げなくてもいい」


 王子はリチャードに言う。


 先ほどウルフェニックス先生から連絡れんらくがあった。


 要注意人物のリチャードがしろの正門まで来ている、と。


 それをまえて、ウルフェニックス先生が提案してきた内容に、王子は賛成さんせいしていた。


 ここで追いはらっても、リチャードはあきらめないだろう。どうにかして、城内じょうない侵入しんにゅうしようとするはず。たとえば、こちらが予想もつかない方法を使って・・・・・・。


 そうなった場合とき最悪よりにもよってのタイミングでさわぎを起こされてはたまらない。


 それよりかは、リチャードには目のとど範囲はんいにいてもらった方がいいと思う。


 だから、しろの中に入れることを許可きょかしたのだ。


 王子はリチャードの姿をまじまじと見つめる。


 どうやら、ここに来るまでに色々とあったらしい。リチャードは執事しつじ服装ふくそうをしている。


 それだけならまだわかるが、はなのすぐ下には、ぎゃくカモメ型のヒゲがあった。どう見ても、「つけヒゲ」だ。


 さらに、なぜか両方のほおにはネコのヒゲがある。あれはサインペンで書いたものらしい。


 どうして、隣国りんごくの王子ともあろう者が、このような「ふざけた外見」をしているのか。


(そこまでしてしろの中に入ろうとした、そういうことなんだろうが・・・・・・)


 その先の思考を王子は放棄ほうきする。今は時間がしい。


 別の話を切り出した。


「リチャード、舞踏会ぶとうかいに参加してもいいが、大人おとなしくしていると約束できるか?」


「もちろんだとも。心の友よ」


 すぐさま銀髪の執事しつじつめたい口調くちょうになって、


「ウソですね。王子、信じてはいけません」


 常識じょうしきで考えるなら、この意見の方が正しいだろう。


 しかし、王子はあえてぎゃくえらんだ。


「問題ない。見張みはりをつける。それでいいな、リチャード」


「もちろんだとも。心の友よ。あ、見張みはりは女性がいいな」


 余計よけいな一言で、執事しつじの顔がさらにけわしくなる。


「王子、私はこの御仁ごじんを信用できません」


 そう言って、一枚のカードを取り出した。


 この国で近年きんねん流行はやっているトレーディングカードゲーム、それに使用するカードのように見える。


 だが、あれはかりの姿だ。


 金髪の王子は知っている。あのゲームに、こんなカードは存在しない。こういう時のために、エクスアイズ先生につくってもらっていた、特別な「魔法の護符カード」である。


「リチャード王子、あなたを信用できないので、これを使わせていただきます。それがいやだというのでしたら、今すぐへいたちをんで確保かくほさせていただきます。舞踏会ぶとうかいが終わるまで、このしろ地下牢ちかろうでおくつろぎください」


 勝手に話を進める銀髪の執事しつじ


 金髪の王子はこれに異議いぎはさまなかった。


 別のことを考えていたのである。


(もしもリチャードが逃走とうそうしようとしたら、あれを使おう)


 一人でこっそり練習れんしゅうしてきた必殺技ひっさつわざ、『王家おうけ反撃はんげき断頭台だんとうだいがえし』。


 キナコというむすめと戦う前に一度、人間相手にためしておきたいところだ。リチャードならゾンビのようにしぶといから、手加減てかげんしなくていいだろう。少しの間だけ気絶きぜつするくらいでむはず。


(そういうわけだから、リチャード、この場からげようとしていいぞ)


 その場合は遠慮えんりょなく使う。『王家おうけ反撃はんげき断頭台だんとうだいがえし』。


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