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カボチャが値上げ、怒りのシンデレラ (Pumpkin price hike. Cinderella gets angry.)  作者:
第六章

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Σ(゜д゜lll)  あの人、どうしましょうか?

 マルリアじょうが機械の修理をしている一方で、ゾーンビルドは馬車が行列ぎょうれつをつくっている横を通って、一人の男性に近づいていく。


 王室の侍従じじゅう武官ぶかんが着るのと同じ、白い軍服姿の男性だ。ひだりむねには、たくさんの勲章くんしょうがついている。


「ウルフェニックス先生、ご相談そうだんしたいことが」


「どうした、ゾーンビルド」


 テテルたち四人の担任たんにんの中で、ゾーンビルドは一番の若輩じゃくはいだ。一方で、ウルフェニックス先生は最年長である。


 また、ゾーンビルドにとって、ウルフェニックス先生は「学生時代の恩師おんし」でもあった。


「あの人、どうしましょうか?」


 ゾーンビルドが視線でしめしたのは、「シンデレラ」たちではない。そのうしろで、「こそこそしているわかい男性」だ。


 はなのすぐ下には、ぎゃくカモメ型のヒゲ。どう見ても、「つけヒゲ」だ。


 また、両方のほおにはネコのヒゲがある。が、あれもサインペンで書いたものとしか・・・・・・。


 ウルフェニックス先生が声をひそめる。


隣国りんごくのリチャード王子か」


「やはり、先生もお気づきでしたか」


 ゾーンビルドも小声で返す。


「当たり前だが、他の者たちも気づいているよな?」


「はい。門番たちは気づいています」


 だから、あの場をはなれる直前、ゾーンビルドは門番たちにこっそり合図あいずをしていた。


 ――監視かんしせよ。逃走とうそうしないかぎり、捕獲ほかくて。


「どうします?」


 判断はんだんを求めると、ウルフェニックス先生が少しだけ笑った。こちらの意図いとをおそらく見抜みぬいている。


「ゾーンビルド、君の考えを聞こうか」


 その口調くちょうからは、きびしさよりも信頼しんらいを感じる。


 学生時代のことをふっと思い出しながら、ゾーンビルドは自分の意見を言ってみた。


「何も気づかないふりをして、このまましろの中に入れるべきかと」


「俺も同意見だ。特に今日はな。あの王子には目のとど範囲はんいにいてもらった方がいいだろう」


 ウルフェニックス先生が満足そうにうなずいたので、ゾーンビルドはホッとした。昔の自分はどちらかと言うと、落ちこぼれの方だった。それが今はなつかしい。


 指名しめい手配てはいされているとはいえ、リチャード王子をしろの中に入れておく。でないと、あの王子はのちのち、面倒めんどうさわぎを起こしかねない。


 今夜はこれから、大事な戦いがあるのだ。


 最強の魔女ゴルディロックスとの決戦。運命の時間はせまっている。


 テテルたちもしろに到着したことで、自分たちの計画タイムスケジュールはりもさらに先へと進んだ。


 もう少ししたら、計画けいかくの最終段階を開始する。


 そこから先は、死闘しとうになるだろう。


 なので、事前に予想できる不安材料は、少しでもらしておいた方がいい。


 こちらの目のとど範囲はんいにいるのなら、あの王子が問題行動を起こす前に、いくらでも手のちようがある。


 しろの中には今、ヴァンプラッシュ先生やエクスアイズ先生もいるのだ。リチャード王子の一人や二人、どうにでもなるはず。


 ただし、あの王子は指名しめい手配てはいされている身。今夜の舞踏会ぶとうかいにおいて、まねかれざる客だ。


 この国の王子が結婚けっこん相手あいてを決めようとしているのに、おんなきのリチャード王子をしろの中に入れるのは、それはそれでリスクになる。


 なので、ゾーンビルドの一存いちぞんでは軽々しく判断はんだんくだせない。さすがに越権えっけん行為こういになる。


 その辺の事情を、ウルフェニックス先生は最初からさっしていたようで、


「わかっている。王室の方には、俺から話を通そう」


 ゾーンビルドはふたたびホッとする。これで目的はたした。リチャード王子はこのまましろの中に入れてしまおう。


「こういうことはいそいだ方がいいな」


 ウルフェニックス先生がゆびをパチンと鳴らすと、その指先ゆびさきに赤い炎が出現する。


 この魔法自体は初歩しょほ初歩しょほだ。うちの学校でも最初に教えている。もっと大きな炎を出すとなると、一気に難易度なんいどがはね上がるが、これなら簡単かんたんだ。


 しかし、ここから先がちがった。特殊とくしゅなアレンジがくわわる。


 ウルフェニックス先生は『天狼てんろう』だ。『不死鳥フェニックス』と『人狼じんろう』の混血こんけつである。基本的には人の姿だが、昼なら『不死鳥フェニックス』に、夜なら『人狼じんろう』に変身することが可能。


 また、変身できない時間帯であっても、夜に『不死鳥フェニックス由来ゆらいの力を、昼に『人狼じんろう由来ゆらいの力を使うことができるのだ。


 で、今は夜。指先ゆびさきの炎が、赤からタンポポ色へと変わっていく。さらに、小鳥の形へと変わっていった。このアレンジは、ウルフェニックス先生の専用オリジナルだ。


「よし、つたえてこい」


 炎の小鳥が指先ゆびさきから飛び立った。


 小鳥は向かう。この国の王子の側近そっきん、銀髪の執事しつじがいる場所へと。


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