Σ(゜д゜lll) だったら、答えは一つしか
いきなりの指名に、今度はシンデレラたちが焦る番だった。
「テテル、どうしよう?」
「私の考えが正しければ、ここで逃げたら確実に怪しまれる」
行列に並んでいる人たちによって、すでに視線の包囲網が完成していた。不審な行動は致命傷になりかねない。
ここはマルリアさんに賭けるしかないだろう。何か作戦があるんだよね?
シンデレラたち三人はテントの方へ歩いていく。
指名手配中のリチャード王子も、すぐうしろからついて来ているようだ。
が、あとは本人にがんばってもらうしかない。もしもの場合を考えると、こっちは無関係を装うのみだ。話しかけてきても全力で無視する。私たちまで巻き込むな。
背後で何やらキュッキュッと音がするので、ちょっとだけ様子を確認してみる。
リチャード王子がサインペンで、自分の顔に「ネコのヒゲ」を書き足している音だった。少しでも顔の印象を変えようという、涙ぐましい努力。
あんなものが、はたして通用するのか。非常に不安である。普通の執事なら、絶対にしない行為だ。
「早く早く!」
マルリアさんに急かされて、シンデレラたちは早歩きになる。
テテルとリプリスが顔を下向きにしていた。自分たちの学校の先生がいるのだから、そうするのは当然かもしれない。なにせ、偽造した『招待状』を使って、お城の中に入ろうとしているのだ。その物的証拠を今、リプリスが持っている。それを問い詰められたら、言い逃れはおそらく無理。
(これ、本当に強行突破になるかも)
相手はゾーンビルド先生だ。「最高の防御力」を誇る強敵らしいが、はたして・・・・・・。
最悪の場合を想定して、シンデレラは思い出す。
――もしもの時には、私たちが時間を稼ぎます。その間に舞踏会の会場へ行って、クーたちと合流してください。
リプリスはそう言っていた。その「もしもの時」が迫ってきているのかも。
ならば、自分もそれに備えておこう。
シンデレラは頭の中に、三人の顔を思い浮かべた。テテルとリプリス、そして、リチャード王子だ。
(この三人は囮要員だと考えよう)
ゾーンビルド先生や門番の兵士たちを引きつける役割だ。捕まるか、倒されるかで任務完了。味方の逃走を助けるために、時間を稼ぐ。
それに加えて、
(マルリアさんは私よりも足が遅いし、体力もない)
したがって、「貴族所有のカボチャ畑から逃走した時のような悲劇」は起こらないはず。
あれは、ひどかった。キナコ、テテル、クーの三人は、私一人を見捨てて逃げやがった。
今回の場合、あの時の私の役割をマルリアさんが担ってくれる。非常に感謝。
したがって、頭の中でのシミュレーションによれば、私が一番安全なはず。捕まる可能性は最も低い。
あとは上手く舞踏会に紛れ込めばいい。今夜は仮面舞踏会だというから、自分の正体を隠すことができるはず。
(これは幸運の風が吹いている! 私の背中を押してくれている!)
ああ、お城の舞踏会だ。美味しい料理に美味しい飲み物、そして、夢のような豪華な世界・・・・・・。
そこまで思い浮かべたあとで、シンデレラは少しうつむいてから、小さくため息をついた。
もしも、本当に強行突破になって、それが成功した時。
その場合、自分は舞踏会の会場にいるだろう。
でも、そこにはたぶん、テテルも、リプリスも、マルリアさんもいないのだ。短い間ではあったけど、ここまで一緒にお城を目指して、苦楽を共にしてきた仲間たち。
それでいいのか? それで自分は心から舞踏会を楽しめるのか?
(・・・・・・)
だったら、答えは一つしかない。
シンデレラは顔を上げて、前を見据える。
(テテルたちを見捨てるんじゃない! 自分は助けを呼びにいくんだ!)
さっきテテルが言っていたじゃないか。
――単独で戦ったとして、勝てる可能性が少しでもあるのは、クーかスティンクル。
あの二人とは、ここまで再会しなかった。ということは、さっきリプリスが言っていたように、すでに舞踏会の会場にいる可能性が高い。キナコとフォーテシアも一緒だろう。
テテルとリプリスの二人ではゾーンビルド先生に歯が立たなくても、あの四人が加勢してくれたら、もしかしたら・・・・・・。
いや、きっと勝機はある!




