Σ(゜д゜lll) 重量オーバー
「え?」
「いいから、体重は?」
「えーと、サクランボみたいな感じかな♪」
ぶりっ子するシンデレラに対して、テテルが冷たい視線を向けてくる。
「本当に体重がサクランボなら、トマトの馬車でも余裕だけど、絶対に違うよね? そもそもトマトの馬車だと、私一人でも重量オーバーになるし」
二人でお城に行くためには、トマトではなく、カボチャくらいのサイズが必要らしい。
「スイカの季節だったら良かったのにね」
「本当だよ。スイカの馬車なら余裕だった」
となると、やはり痛い。農業ギルドによる、カボチャの全回収。
あれさえなければ、カボチャに不自由しなかったのに。きっと今頃、馬車でお城に向かってウハウハだったはず。
「決めた」
そう言うとテテルは、タワシ化したトマト目がけて、新しい爪楊枝を勢いよく投げる。
爪楊枝が刺さった瞬間、トマトが爆発した。赤い紙吹雪が舞い散る中を、黒いハトが一羽飛んでいく。
こういうこともできるらしい。まるで手品だ。シンデレラは感心した。
(『瞬間移動』のあとに、これも教えてもらおう)
少しアレンジすれば、女子会で使えそうだ。
「シンデレラ、今から一緒にカボチャを買いに行こう」
「でも、持ち合わせが」
「足りない分は、私が立て替えておく。あとで返してくれればいいから」
「そういうことなら」
どこの店が一番安いのかは、すでにチェック済みだ。さっきの買い物は無駄ではなかった。
すぐさま家を飛び出すシンデレラとテテル。さっき最初に寄ったスーパーへと向かう。
そんな二人の様子を、高い建物の上から見ている者がいた。
黒いドレスを着た女の子だ。頭には「縁のついたとんがり帽子」、両腕と両脚には「純白の防具」をつけている。
さらに、テテルと同じマントをしていた。「内側が白で外側が黒」というマントだ。あと、腰のあたりには、『見習い』と書かれた丸いバッジもある。
黒いドレスの女の子は防具の隙間から、羊皮紙の契約書を取り出すと、その内容を素早く確認した。
すぐ横では白い手袋が二つ、空中に浮いている。手袋にはどちらも、黒い子猫のアップリケがついていた。
片方の手が瓶を持ち、その中の液体を、もう片方の手が持つグラスへと注いでいく。
うやうやしく差し出されたグラスを、
「ありがとう」
優美に受け取る女の子。
彼女も魔女だ。
グラスに入った「クリームオレンジ色の液体」に口をつけると、
「しぼりたてね。悪くない味」
そして、次の瞬間には、その場所から姿を消していた。