Σ(゜д゜lll) こなごな
(何だ? 何かあったのか?)
シンデレラは警戒する。
(ひょっとして、敵でもいるのか?)
爪楊枝を構えたテテルを先頭に、シンデレラたちはゆっくりとスイートルームの中に入った。
シンデレラは視線でリチャード王子を探す。
王子はベッドの上にいた。後頭部を押さえている。口からは時折、呻き声をもらしていた。
そして、その真上の天井には、人形のあとがある。人形の大きさは、あの王子にピッタリだ。
(この不自然な状況・・・・・・)
スイートルームの中に何者かが潜んでいて、そいつの仕業だろうか。
(あの王子、あちこちで面倒を抱えていそうなタイプだし・・・・・・)
多方面で恨みを買っていてもおかしくない。
となると、そいつは今、「王子の仲間が来た!」と勘違いをしているかも。
(無関係です)
そう言ってみようかな?
そんなことを考えながら、シンデレラは警戒を続ける。
ところが、このスイートルームの中に、自分たちと王子以外の気配を感じなかった。
こうなると、別の可能性を疑いたくなる。
(・・・・・・リチャード王子のイタズラか)
なかなかの熱演っぷりだけど、私にはわかっちゃったもんね。
シンデレラはテテルに囁く。
「あのバカ王子の後頭部に、その爪楊枝を投げてみない?」
これが聞こえたわけではないだろうが、リプリスが魔法で小さな氷を出現させた。
それを王子の後頭部に投げつけることを、シンデレラは期待する。
しかし、彼女の行動は違った。
その氷をベッドの端っこに放り投げたのだ。王子のいない場所に。
氷は緩やかな曲線で飛んでいき、ベッドに落ちた途端、予想外の変化を見せた。
真上にものすごい勢いで跳ねたのだ。
その結果、氷は天井に叩きつけられて、粉々に砕け散る。
「これ、スティンクルの魔法ですね」
リプリスがため息をつく。
どうやら、リチャードの身にも、あの氷と同じことが起きたらしい。
衝撃の光景を見て、シンデレラは思う。
(危ないところだった)
実は自分も考えていたのだ。ベッドへの大の字ダイブ。
もしもそれを、あの王子よりも先に実行していたら、スティンクルの仕掛けていった罠で、自分がああなっていたわけか。危ない、危ない。
身代わりになってくれたことを、シンデレラがこっそり感謝していると、リプリスが魔法でゴムボールを出現させた。
それを今度こそ、王子の後頭部に全力投球!
ではなく、先ほどの氷と同様、ベッドの端っこに放り投げる。
すると、ベッドがまるで超強力トランポリンになったかのように、そのボールを天井へ激しく叩きつけた。
ボールがベッドに落ちてくる。
しかし、今度はほとんど跳ねなかった。どうやら、トランポリンに変わるのは、最初の一回だけらしい。
じゃないと、あの王子は天井とベッドの間を、何回も高速往復させられていたはず。今頃は全身複雑骨折していたに違いないのだ。
シンデレラの視線の先では、なおもリチャード王子が後頭部を押さえている。
テテルが大急ぎでスイートルームの中を調べ始めた。
その結果、スティンクルが魔法の罠を仕掛けていったのは、あのベッドだけらしい。あとはどこを触っても、問題ないという。
シンデレラはホッとすると、
(王子が回復するにはまだ時間がかかりそうだし、今の内にシャワーでも浴びておこうかな)
ここまで色々あったけれど、お城の舞踏会までもうすぐだ。




