Σ(゜д゜lll) こちらにどーぞウェルカムぷりーず♪
「はい、はーい! 私が使いまーす! 早い者勝ちー♪ エクスアイズ先生、すてきー、かっこいいー♪ 私、前から先生のことを尊敬していましたー♪ 先生、いい人、すごい人ー♪」
調子のいいことを言って、「さあ、『招待状』をこちらにどーぞウェルカムぷりーず♪」と、スティンクルは両手を前に突き出した。
彼女の隣にいるフォーテシアは一瞬だけ、キナコに対して申しわけなさそうな表情をすると、
「先生、いい人、すごい人」
やや棒読みながら、スティンクルの行動を後押しする。
これでさらにスティンクルが調子づいて、
「先生、いい人、すごい人ー♪」
「先生、いい人、すごい人ー」
そんな中、エクスアイズ先生がクーに尋ねてくる。
「それでいいですか? 僕は先生という立場ですけど、君たちが殴り合いを始めても、今なら止めませんよ。というか、そっちを少しだけ期待しています。さあさあ、遠慮せずにどうぞ」
クーはジト目になると、
「どうぞ、スティンクルにあげちゃってください」
彼女が『招待状』なしでお城の中に入るには、ほぼ間違いなく強行突破になる。
(でも、ぼくなら・・・・・・)
できることなら、ここで余計な騒ぎを起こしたくない。『招待状』をスティンクルに譲れば、彼女による強行突破は回避できる。
クーは無言でキナコの方を見た。
キナコの目は、まっすぐこちらを向いている。「信頼しているよ♪」と言いたげな顔をしていた。『招待状』を譲ることに文句がある、という顔ではない。
その期待に応えたいと思った。たとえ『招待状』がなくても、ぼくは必ずキナコと一緒に、お城の中に入ってみせる。
「それではスティンクル、この『招待状』は君のものです。おめでとう。お城の中には、ごちそうが待っていますよ」
「わーい♪ 先生、ありがとう♪ まじ神様ー♪」
満面の笑みで『招待状』を受け取るスティンクル。
そのあと、こっちを向いて、
「クーもありがとう♪」
それを聞いてクーは思う。これでいいんだ。スティンクルには先に、お城の中に入ってもらおう。
「キナコ、行こう」
「じゃあ、フォーテシアちゃん、あとでね」
「うん。中で待ってる。私は情報収集をしておく」
エクスアイズ先生がドアの前を空けた。
ここでわざわざ反対側のドアから出るのも何だし、そっちのドアから、クーはキナコを連れて馬車を降りようとする。
「僕は親切な方じゃありませんが、ちょっとだけサービスしてあげましょう」
エクスアイズ先生が言い終わると同時に、クーの服装が変わった。ドレスではなく、黒い忍者装束にだ。クーにとっては、いつもの服装。
そして、キナコも同じ忍者装束に変わっている。
二人の忍者装束、その背中に刺繍されているのは、「赤い月夜に、吠える金色の竜」だ。
「すごい! 私まで忍者っぽい!」
エクスアイズ先生の魔法に、キナコが驚いている。
一方で、クーは冷静だ。
ドレスのままでは動きにくいので、どのみち服装を変える必要があった。
しかし、エクスアイズ先生のことだ。このサービスには何か裏がありそうな・・・・・・。
クーが疑っていると、エクスアイズ先生が告げてくる。
「そうそう、その魔法は三〇分で元のドレスに戻ります。なので、行動はお早めに」
どうやら、時間制限をつけるのが目的のようだ。この先生の親切にはだいたい、余計なものがついてくる。
(でも、ぼくならその時間でも・・・・・・)
幸いなことに、キナコは運動神経が非常にいい。足手まといにはならないだろう。
(ぼくは良い相方に恵まれた)
クーはキナコと一緒に馬車を降りる。
今から三〇分以内にお城に侵入するため、すぐさま行動を開始した。




