Σ(゜д゜lll) さて、どうします?
突然のエクスアイズ先生登場に、クーは警戒した。
時計台の破壊に失敗して、逃走した時のことを思い出す。クーがゾーンビルド先生と対峙しているところに、エクスアイズ先生が割り込んできて、ひどい目に遭った。
この先生は広範囲魔法を得意としている。その上、新しい魔法の実験台に生徒を使いたがるのだ。
先生を警戒しながら、クーは素早く考える。
(今すぐ逃げ出そうかな)
開いているドアの前は、エクスアイズ先生が塞いでいる。
しかし、馬車のドアなら反対側にもある。
そっちには門番やゾーンビルド先生がいるけど、
(キナコを連れて逃走しようかな)
でも、相手はあのエクスアイズ先生だ。無事に逃げきれるとは思えない。逃げたら逃げたで、「あー、なるほど。鬼ごっこですね。いいでしょう、三数える間、待ってあげます♪」とか、喜びそうだし・・・・・・。
以前にも、そんなことがあった。あの時のエクスアイズ先生は、並走しながら三数えていた。あれを「待つ」とは言わない。三数えたあとには、凶悪な笑顔で魔法をぶち込んできたし・・・・・・。
(さすがに、学校の生徒じゃないキナコには手加減するだろうけど、その分、ぼくには容赦しない気がする)
今の人畜無害そうな笑顔に騙されてはいけない。
いつでも攻撃できるよう、クーはこっそり指の間に手裏剣を挟んだ。
「クー、そんな顔をしないでください。君がどんなことを考えているのかは知りませんが、僕はね、これを持ってきただけですから」
エクスアイズ先生が取り出したのは、白い横長の封筒だった。赤い蝋で封がしてある。
「舞踏会の『招待状』です。本物ですよ。これがあれば、ゾーンビルドくんが確認作業をしていても安心。簡単にお城の中に入れちゃいます♪」
そのあとで、「ただし」とつけ加えると、
「僕は親切な方じゃありませんので、ここで悪いお知らせです。とても残念なことに、『招待状』は一通のみ。これがどういうことか、説明は不要ですね?」
やはり、そういうことか。クーは露骨に顔をしかめる。
そこでフォーテシアが口を開いた。
「質問ですけど、その『招待状』は、『何人まで』とか人数制限があるんですか?」
「良い質問です。そんなに多人数でなければ、『親族です』とでも言い張ることで、多少の融通は利くでしょうね」
「だったら、私たち四人まとめて一組ってことにすれば」
たとえば、キナコがメインの招待客で、クー、スティンクル、フォーテシアは「いとこ」ってことにするとか。
「そうですね。そこの賢いお嬢さん、非常に良いアイデアです。ただし、それは今から使えなくなります」
エクスアイズ先生の手に魔力が宿る。
その手に持った封筒がわずかに発光した。光はすぐに消える。
何をしたのかというと、
「三人以上で使おうとか、そんな不正をしようとしたら、この『招待状』が『よく冷えたエナジードリンク』に変わるようにしました。あとはそれを飲んで、強行突破でも何でも、全力でがんばってください。できるものならね。僕はゾーンビルドくんの応援でもしましょう」
ろくでもないことをしてくるエクスアイズ先生。フォーテシアのアイデアをつぶしてきた。
「さて、どうします? どちらが使います?」
この『招待状』でお城に入ることができるのは、クーとキナコか、スティンクルとフォーテシアか、どちらか一組のみ。




