Σ(゜д゜lll) この美少女にご用ですかー?
「クー、『招待状』を持ってる?」
スティンクルが聞いてくる。
「ないなら、強行突破するしかないけど」
そう言うと、「ルンルンルン、ぼかーん♪」と口ずさみながら、馬車の窓に顔を近づける彼女。門の方を偵察している。
ところが、すぐにトーンダウンした声で、
「わーおー、ゾーンビルド先生がいる」
そのあと真面目な顔になって、
「おかしい。卒業式が終わるまで、私がスクラップにしたはずだが」
「してないって」
クーは即座に否定した。
自分でも窓の外を見る。ゾーンビルド先生がいるなんて、スティンクルの冗談であることを期待したが・・・・・・。
本当だ。門番の後方にあるテントに、特撮ヒーローのような金属スーツを着た人物がいる。『メタルゾンビ』のゾーンビルド先生。
「これはまずいね」
クーは思った。あの先生を相手に強行突破するとなると、難易度は格段に跳ね上がる。
四人の先生たちの中で、「最高の防御力」を持ち、防衛戦に長けた相手だ。そういう意味では、この場面で最悪の先生だろう。
ゾーンビルド先生は左腕に、急ごしらえの義手をつけていた。
(あれなら、本調子とはいかないはず。でも・・・・・・)
卒業前の伝説づくりに、学校の時計台を破壊しようとして失敗した。あのことがクーの頭をよぎる。
クーたち四人がそれぞれ丹精を込めて育てた『怒り花火』、あれがゾーンビルド先生一人に阻止されてしまったのだ。スティンクルの『光収束』でも、あれを上回る火力は出せない。
クーは考え込む。
ゾーンビルド先生は強い。
しかし、勝算がないわけでもなかった。
作戦があるにはある。
(でもなぁ・・・・・・)
クーはため息をついた。できることなら、強行突破はしたくない。たとえ成功したとしても、色々と面倒なことになる。
ここにリプリスがいないことが、今になって悔やまれる。彼女がいれば、本物そっくりの『招待状』を偽造してもらったのに。
それがあれば、堂々とお城に入ることができた。その場合、ゾーンビルド先生もとやかく言ってこないだろう。これは、そういう課題だと思う。
(残念だけど、精巧な偽造は、ぼくやスティンクルには無理だ)
魔法で偽造した『招待状』で、仮に門番の目を誤魔化すことができたとしても、さらにゾーンビルド先生もいるし、その横には偽造チェック用の機械まであるのだ。あれをくぐり抜けることができるのは、自分たちの中ではリプリスくらい。たぶん、テテルでも厳しいと思う。
(やっぱり、ホテルで待つべきだったかな)
今すぐキナコたちを説得して、ホテルに引き返そうか。そんなことを考えた時だった。
馬車のドアを誰かがノックしてくる。門番の声が聞こえたのとは、反対側のドアだ。
クーはその瞬間、ある気配を感じ取る。ノックしている人物が誰なのか、一瞬でわかった。
ここまで馬車の運転を任せていた兵士ではない。
別の人物だ。クーやスティンクルがよく知っている人物・・・・・・。
相手は馬車の窓から自分の姿が見えないように、姿勢を低くしているらしい。
(これは開けない方がいいかも)
そう口にするよりも先に、
「はーい、この美少女四人にご用ですかー?」
スティンクルが片手をグーにしながら、もう片方の手でドアを開ける。相手次第では、そのままパンチを叩き込むつもりらしい。
ドアの向こうにいた人物が背筋を伸ばした。ピンク色のタキシードを着た男性だ。
クーとスティンクルは真逆の反応をする。
思わず顔をしかめたクーと、片手のグーを解除して笑顔になるスティンクル。
そんな二人に対して、タキシード姿のエクスアイズ先生が告げてくる。
「僕は親切な方じゃありませんが、良い知らせを持ってきましたよ」




