Σ(゜д゜lll) はい、カボチャ
で、そのあとテテルに言われて、カボチャを買いに行くことになり・・・・・・。
日が完全に沈みきる前に、シンデレラは帰宅したというわけだ。
「あ、おかえりー」
シンデレラが帰ってきたのに気づいて、テテルは謎のゲームを中断した。トマトに爪楊枝を刺しまくる遊びで、トマトが「タワシ」みたいになっている。
「大変だったんだよ」
シンデレラはエコバッグから中身を取り出す。複数の店を回ったが、どこもカボチャが値上げしていた。
そこで買ってきたのが、
「はい、カボチャ」
お総菜コーナーにあった「カボチャの天ぷら」だ。
「・・・・・・」
テテルの目が「え、マジで?」と言いたげなので、
「これもあるよ」
カップスープのコーナーにあった「カボチャのポタージュ」だ。
「・・・・・・」
それには関心を示さずに、テテルの目がすっと、エコバッグの方に移動する。「カボチャがまるまる一個」入っているような、ふくらみ方ではない。
そんな視線に気づかないふりをして、
「最後がこれ♪」
シンデレラが取り出したのは、見切り品コーナーにあった「カボチャのプリン」だ。半額のシールがはられている。
「一つしかないから、半分こにしようね♪」
なお、テテルの注文は「カボチャをまるまる一個」だ。
(やっぱりダメ?)
シンデレラは上目づかいで、彼女の様子をうかがう。
テテルが無言のまま、「カボチャの天ぷら」を手に取った。
怒っている感じはなさそうだ。でも、笑って許してくれる感じでもない。まじめな顔をしている。
ここは先に謝っておくか。
「ごめん、カボチャが値上げしていて・・・・・・」
「そうみたいだね」
テテルの声から緊張感のようなものが伝わってくる。
彼女は小さく息を吐くと、
「天ぷら一切れで、この値段。明らかに高いよね」
お総菜の値札シールを、シンデレラの方に向けてきた。
「うん、カップスープやプリンはそうじゃなかったのに」
「なるほどね」
考え込むテテル。
「もう一度確認するけど、裏の畑にカボチャは一個も残ってないんだよね?」
シンデレラはうなずいた。
今日の午前中にいきなり農業ギルドが訪ねてきて、すべて「お買い上げ」していったのだ。大きなものも小さなものも全部である。
おそらく継母の仕業だ。そうに決まっている。私に対する、奴の「嫌がらせの嗅覚」は想像以上だ。
あとでこんなことになる、それがわかっていたなら、継母の目を盗んでカボチャを一個か二個、隠しておいたのに・・・・・・。
「ねえ、テテルちゃん。カボチャをまるまる一個じゃないと、絶対にダメなの?」
「基本的にはね」
そのカボチャを魔法で、立派な馬車にするらしい。
「たとえば、ぼろい自転車でお城に駆けつけたとして、門番が笑顔で中に入れてくれると思う?」
今夜は舞踏会だ。場にそぐわない者はお断りするだろう。
しかも、シンデレラには「王子さまと結婚する」という目標もある。常識的に考えて、相応の乗り物で到着した方がいい。となると、馬車クラスは必要か。
「だったら、他の野菜を馬車にするのは?」
シンデレラはちらりと、テテルがさっきまで爪楊枝を刺していた物体を見る。
「トマトなら、まだ冷蔵庫にあると思うけど」
すると、テテルが聞いてくる。
「シンデレラ、体重は?」