Σ(゜д゜lll) 見落とし
(テテルたちを待たなくて、本当に良かったのかな)
クーは考えごとをしていた。
馬車の中には、キナコ、スティンクル、フォーテシアもいる。全員が見違えるような格好になっていた。
華やかなドレス姿で、髪も丁寧にセットされている。クーも含めて四人とも、外見はまるで貴族のお嬢さまだ。
先刻、ホテルの窓からクーたちは見た。地表から空に向かって、「光の柱」が出現するのを。
あれは、ウルフェニックス先生の『光収束』で間違いない。
先生があの技を使ったということは、誰かと戦っている?
状況から考えて、先生の相手はテテルやリプリスではない。では、誰と戦っているのか?
(ひょっとしたら、ぼくは勘違いをしているのかも)
自分たちが進んでいる道、この途中に先生たちが四人とも、待ち構えていると思っていた。
だけど、それだとあの『光収束』の説明がつかない。
ウルフェニックス先生がいるのは、明らかに別の場所だ。お城につながる二つの道の、もう片方。クーたちが今進んでいる道ではない。
(それぞれの道に、先生たちは二人ずつ待ち構えていた?)
そして、ウルフェニックス先生がいる方の道で、何か特殊な状況になったのだろうか。まさか、先生同士で戦っている?
カボチャの馬車は快調に走り続けている。
ホテルへ接近した時の体験で、クーは学習した。あの超巨大馬車でお城に乗りつけるのは、よろしくない。最悪の場合、警告なしで攻撃される。
それでスティンクルと話し合って、普通サイズの馬車にした。馬車を引く六頭の馬は、ホテルが貸してくれたものだ。
さらに御者として、ホテルにいた兵士の一人が、同行してくれている。馬車の走行については、その兵士に一任していた。
クーは考えごとを続ける。といっても、先生たちの気配が近くにないかを探りながらだ。
ホテルでシャワーを浴びたあとに、クー、キナコ、スティンクル、フォーテシアの四人で会議をした。
テテルたちを待つか。それとも、先にお城へ向かうか。
その結果、今こうしてテテルたちを待たずに、先にお城へ向かっている。
今回のミッション、王子が結婚相手を決めた時点で「タイムリミット」だ。テテルたちを待っていては、手遅れになるかもしれない。
だったら、同盟関係にある仲間の誰かが、先に到着していた方がいい。現地にいれば、何かしらの手を打てる可能性がある。
そう主張してくるキナコ、スティンクル、フォーテシアに、クーは従うことにした。
キナコたち三人が言うように、「タイムリミット」になっては元も子もない。この場にいないテテルたちとは同盟を結んでいるわけだし、あとで非難されることはないはず。
(でも、何だろう。何か大事なことを見落としている気がする)
不安めいた何かが、自分の思考の中でずっと「かくれんぼ」をしているような・・・・・・。
(ぼくの気のせいだといいけど)
馬車が減速を始めた。
やがて停止する。お城の門の前に到着だ。
馬車の外から聞こえてくる。出迎えの楽隊が奏でるメロディーだ。
さらに、門番の声もする。
「お手元に『招待状』をご準備ください。お城にお入りいただく前に、確認させていただきます」
クーはハッとした。
見落としていたのは、これだ。『招待状』がなければ、ぼくたちはお城の中に入れない!




