Σ(゜д゜lll) 今、戦闘中か?
ただし、ここでウルフェニックスは攻撃の方向を変えた。
真正面にではなく、真上に向かって放ったのだ。光が空に直進していく。
この行動には、理由があった。
あのまま真正面に撃っていれば、その直線上やその周辺にも被害が出ていた。いくらか手加減はしているものの、それでも被害がゼロとはいかない。
また、ウルフェニックスは次のように判断した。
この金色兜はおそらく、退き際をわきまえている。保身に長けた悪党に違いない。
ならば、この状況でどう動くか。
十中八九、逃げると思う。
なので、最初の『光収束』は警告だ。その意味を考えて行動しろ。
それができない愚者なら、ここで散れ。次は最速でつぶす。手加減は期待しないでもらいたい。
閃光の最中、ウルフェニックスは目にした。
金色兜が仲間二人を両脇に抱えて、脱兎のごとく走り去るのを。こっちに背を向けて一直線に逃走している。
悪くない選択だ。こちらとしても非常に助かる。追撃はしない。
今日は体力と気力をあまり消耗したくないのだ。追い払えば十分だろう。
だが、もしもまた、お城に向かう馬車を襲うようなら、今度は容赦しない。
が、そういう面倒は勘弁してもらいたい。特に今夜は・・・・・・。
閃光がやむ。
周囲は大騒ぎになっていた。
馬車が渋滞している辺りにいる者たちが、目を押さえて悲鳴を上げている。目を閉じていた者も、目を閉じていなかった者も、全員だ。
木に吊るされている者たちや、地面に倒れている者たちも同様だった。悲鳴の大合唱。
こうなることを、ある程度は予想していたものの、ウルフェニックスは反省する。
(すまない。もっと手加減をすべきだったようだ)
しかし、中途半端な威力では、あの金色兜が即座に撤退したかどうか。
あの状況ではやむを得なかった、そう割り切ることにする。本当にすまない。ごめんうるふ。
地上の閃光はやんだが、上空にはまだ『光収束』の光跡が、はっきりと残っている。あの感じだと、あと数分は消えないだろう。おかげで、この周囲はそれなりに明るい。
とりあえず、事後処理に取りかかろうとしたところで、
――今、戦闘中か?
頭の中で声がする。自分にだけ聞こえる声だ。高等魔法の一つ、『思念通話』。




