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カボチャが値上げ、怒りのシンデレラ (Pumpkin price hike. Cinderella gets angry.)  作者:
第五章

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Σ(゜д゜lll)  なかなかひどい有様

 クーたち四人が超巨大馬車でホテルに到着したのと同じころ、一人の男が道なき道を疾走しっそうしていた。普通の人間には追いつけない速度だが、その精悍せいかんな顔つきにつかれの色は一切いっさいない。


(少しいそぐとするか)


 男はがけの方へと向かう。


 そして、躊躇ちゅうちょなくがけからジャンプした。真下の地面までは、ゆうに百メートルはある。


 が、男は落ち着いていた。落下速度をゆるめるような魔法は使わない。そんなことをしなくても、この程度ていどの高さなら、何の問題もなく着地できる。


 地面まで少し時間があるので、男は空中で大きくびをした。


 今夜の舞踏会ぶとうかいに参加するので、いつもとはちが服装ふくそうをしている。それで、どうにもかたがこるのだ。


 王室の侍従じじゅう武官ぶかんが着る白い軍服で、その中でも最高格。侍従じじゅう武官ぶかん筆頭ひっとう、ないしは、その要職ようしょく過去かこつとめた者だけが、着用をゆるされる特別製だ。


 両方のかたには、「王家の紋章もんしょう」が刺繍ししゅうされている。通常の侍従じじゅう武官ぶかんだと、紋章もんしょうみぎかたのみだ。ひだりかたにはない。


 落下中の風で、ひだりむねにつけた勲章くんしょうれが音を立てた。男は右手で、それらをかるさえる。


 その直後、地面に足がついた。常人じょうじんなら骨折こっせつしてさらにきん組織そしき破壊はかいされる、そんな衝撃しょうげきき上げてくる。


 だが、何事もなかったように走り出した。


 やせ我慢がまんではない。極度きょくど鈍感どんかんなわけでもない。


 男は『人狼じんろう』だ。


 その上、『不死鳥フェニックス』の血もざっている。


 りょう種族しゅぞく混血こんけつで、『天狼てんろう』とばれる存在だ。『人狼じんろう』の強靱きょうじん筋力きんりょく耐久力たいきゅうりょくくわえて、『不死鳥フェニックス』の超再生能力もある。


 なので、今の十倍の高さから飛び降りたとしても、まったく問題なかった。がけから飛び降りたおかげで、数秒の近道ショートカットに成功。


(それにしても)


 男はみじかく息をく。


 本来なら今頃いまごろ、おしろでゆっくりしていたはずだった。


 しかし、予定が変わった。


 おしろに通じる道の片方で、何か異変が起きているらしい。ある時間をさかいに、そっちの道から来る馬車が途絶とだえたのだ。確認に送った兵士たちも、いまもどってきていない。


 ヴァンプラッシュによれば、生徒スティンクルたちは今頃いまごろ、別の道を進んでいるそうだ。したがって、この異変、あの問題児スティンクルたちの仕業しわざではない。


まねかれざる客でもいるのか)


 男は走りながら目を閉じる。


 すぐに心の中でつぶやいた。


(いるな、三人)


 てきの数を、気配けはいで感知する。


 三人の内、二人は大したことがないようだ。しかし、一人はかなりのれらしい。


 気配けはいを消して近づこうかと、一瞬思ったがやめた。おそらく、こっちの接近を、すでに向こうも気づいているだろう。


 ならば、こうした方がいい。


 走る速度を上げた。風を置き去りにする。


 そして、一分ほどって足を止めた。


 現場に着いたのだ。かるまわしただけでもわかる。なかなかひどい有様ありさまだ。


 いくつもの馬車がよこだおしになっている。馬車の急所きゅうしょ的確てきかくつぶされていた。ああなったら、走行中でも馬車は止まる。


 ひどい有様ありさまなのは、それだけではない。


 まばらに立つ木々、そのふとえだからは、男たちがるされていた。全身をなわしばられていて、気をうしなっている男たちの数は二〇をくだらない。おしろから派遣はけんした兵士たちの姿もあった。


 これをやった連中にとって、「戦利品」のつもりらしい。るされている男たちは、わかい者がほとんどだ。


 そうでない者たちは、襲撃しゅうげきされた馬車と同様どうようきずつき地面にたおれている。


 そんな中で、臨戦りんせん態勢たいせいをとっているのが、なぞかぶとをかぶった三人だ。


 カボチャそっくりの形をしたかぶとで、悪魔あくまのような目鼻めはながついている。真ん中の一人がかぶっているのは金色きんいろで、左右さゆうの二人は銀色ぎんいろだ。それぞれの頭頂部とうちょうぶには、リボンをいたフォークがさっている。


 頭部全体をおおかぶとなので、相手の顔はわからない。


 三人の首から下に、ウルフェニックスは視線をうつした。


 服装ふくそう迷彩めいさいがらのジャージ。頭以外は防御ぼうぎょてて、動きやすさを重視しているようだ。金色きんいろかぶとやつだけが、あつみのあるかわ手袋てぶくろをしている。


 三人とも女だ。


 あの馬車もあの兵士たちも、こいつらの仕業しわざらしい。


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