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カボチャが値上げ、怒りのシンデレラ (Pumpkin price hike. Cinderella gets angry.)  作者:
第四章

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Σ(゜д゜lll)  私、知ってるもんね

 シンデレラが指摘してきすると、男はふたたあせり出した。


「な、何だと! 失礼な! 俺は本物だぞ!」


「ウソだね。私、知ってるもんね」


 この男は以前、キナコの「おだんご屋さん」でナンパをしていたのだ。


 で、店の看板かんばんむすめであるキナコが、その迷惑めいわく行為こういをやめるよう、男に何回も注意した。


 なのに、まったく聞くみみを持たない。


 すぐにフォーテシアをナンパし始めたので、とうとうキナコがおこった。


 こいつうでばやくつかむと、


「えいっ!」


 彼女キナコは「古流こりゅう柔術じゅうじゅつ」の使い手だ。


 あの時、シンデレラは初めて見た。キナコの『はし一本いっぽん背負せおげ・みたらし』。このニセ王子を店の地面にたたきつけたのだ。


 しかも、それで終わりではなかった。キナコのわざはさらに続く。


 たたきつけられた反動で、ナンパ男の体が空中にもどってきた。


 そこにのようなするどりをたたむ。キナコの『空中くうちゅうゆみり・あんこプッシュ』だ。


 強烈きょうれつりを食らって、ナンパ男の体がゆみのようにしなる。そのままかべの方へとんでいった。


 ナンパ男がかべたたきつけられる。かなりの衝撃しょうげきだ。その反動で、男の体が前方にもどってくる。


 そこに突進とっしんしていくキナコ。


 さらにさらに、追い打ちをかける。ナンパ男の頭を両手でつかむと、突進とっしんしてきたいきおいのまま、その後頭部こうとうぶかべたたきつけた。キナコの『突進とっしんとつ・ごまクラッシュ』だ。


 彼女キナコは「おだんご屋さん」の看板かんばんむすめであるのと同時に、用心棒ようじんぼうでもある。あの店の平和を守っているのだ。あの店で問題を起こすのは、絶対にやめておこう。


 これらの連続れんぞくわざによって、ナンパ男は失神しっしんした。すぐには目をましそうにない。


 キナコが息一つみださずに言う。


「シンデレラちゃん、フォーテシアちゃん、少しつだってくれる?」


 何をするのかと思ったら、


「『きびだんご』を口にめたあと、きにして川にほうむの」


 その共犯きょうはんしゃにならないか、という勧誘おさそいだ。この「おだんご屋さん」、すぐ近くに川がある。少し下流には大きなたきもあった。


「そうそう、口にめる『きびだんご』は賞味しょうみ期限きげんれのやつだから、つまみ食いしちゃダメだよ。それでおなかこわしても、当店は無関係です。あしからず」


 このタイミングで、数人の男たちが「おだんご屋さん」に入ってきた。


 壁際かべぎわたおれているナンパ男を見るなり、


「またか。こりないお人だ」


 ほとんど一瞬で、おおよその状況じょうきょうさっしたらしく、


「どうもすみませんでした。このバカがとんだ失礼を」


 男たちが一斉いっせいに頭を下げてくる。


 どうやら、このナンパ男、他の場所でも同じようなことをしているらしい。


 で、そのあと始末しまつに、仲間の男たちがれていた。店への謝罪しゃざい居合いあわせた客たちへの陳謝ちんしゃ迷惑めいわくりょうに口止め料。


 それらと並行へいこうして、仲間の一人がナンパ男の意識いしきもどそうと、水をかけたり、往復おうふくビンタをしたりしている。


 しかし、なかなか目をまさないので、


「あの、ご希望きぼうでしたら、『タバスコウォーター』とか用意できますけど」


 キナコがおだやかな顔で、さらりと提案している。その手にはすでに、バケツが待機中スタンバイだ。中身は真っ赤な液体えきたいである。


 男たちの一人が、ちらりとバケツの中を見た。


 まったく表情を変えずに、


「すみません、おねがいします」


「はい、どうぞ。特別に激辛スパイシーにしておきました。当店からのサービスです」


「それはそれは、ご親切に」


 この間に、フォーテシアが「きびだんご」を千切ちぎって、ナンパ男のはなめている。『タバスコウォーター』が鼻孔びこうに入らないようにだ。さすがに、かわいそうだと思ったらしい。


 男たちの一人が、バケツの中身をナンパ男にぶちまける。『タバスコウォーター』の効果は「てきめん」だった。


 ナンパ男が目をました。奇声きせいを発しながら、のたうちまわっている。かべにもぶつかりまくっていた。


 それで、はなあなめてあった「きびだんご」がはずれたらしい。奇声きせいがパワーアップする。


「他のお客さんの迷惑めいわく


 そう言ってフォーテシアが、バケツで普通の水をぶっかけること五回。


 ようやく奇声きせいが止まった。


 ナンパ男は店の地面で大の字になったまま、


「何をする! 俺は王子だぞ!」


 しかし、仲間の男たちが即座そくざ訂正ていせいする。


「いいえ、ウソです。ニセモノです。たまに、こういうことを言い出すんです。信じないでください」


 ナンパ男の口にさるぐつわをはめた。


 そして、ナンパ男の体をかついで、男たちは店を去っていったのである。


 あの時のニセ王子が、ここにいる「こいつ」なのだ。


「失礼な! 俺は本物だぞ!」


「ウソだね。私、知ってるもんね」


 わっはっはと勝ちほこるシンデレラ。こんなことでだまされるほど、おひとしではないのだ。


 ところが、リプリスがこまった顔でげてくる。


「その人、本物の王子ですよ。隣国りんごくのリチャード王子です」


 まさかの発言に、シンデレラはうろたえる。


「しょ、証拠しょうこは」


 そうだ、リプリスのかんちがいかもしれないし・・・・・・。


「こうなっては仕方がないな。国外ではみだりに見せるな、と言われているのだが」


 王子(?)が『国際こくさい運転うんてん免許めんきょしょう』を見せてくる。名前はリチャードで、備考びこうらんには『王室おうしつ特権とっけん』。王子じゃなくても、王室関係者なのは確定だ。いや、これが偽造ぎぞうひんだという可能性も少しは・・・・・・。


 シンデレラは王子(?)のマント、その金具かなぐられている紋章もんしょうぬすみ見た。


 うーむ、隣国りんごくの王室が使っている紋章もんしょうって、こんな感じだったかも。しかも、これ、純金じゅんきんっぽいし・・・・・・。


「どうやら、本物の王子でちがいないみたいだね」


 テテルがだめししてくる。


 シンデレラはパニックにおちいった。


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