Σ(゜д゜lll) いい物拾った
(ここからさらに、攻勢を強める!)
そう意気込むシンデレラ。
ところが、大爆発の直後に、予想だにしないものを見てしまう。
なんと、ヴァンプラッシュ先生が地面に倒れているのだ。
(え? 今の爆発で?)
ひょっとして、防御力は皆無なのか? あの黒い鎧って、実は見かけ倒し?
といっても、普通の人ならああなっても全然おかしくない、そんな大爆発ではあったけど・・・・・・。
(でも、テテルたちの先生なんだよね? これで最強?)
シンデレラが疑っていると、
「いい攻撃だった。今の感じを忘れないように」
大の字に倒れた状態で、ヴァンプラッシュ先生が言う。その口調はどこか優しい。
それでシンデレラも理解する。
(そうか。わざとだ)
そもそもヴァンプラッシュ先生は、テテルとリプリスを倒そうとはしていなかった。教師として、二人の戦い方を採点していただけなのかも。
で、テテルたちは合格したらしい。戦闘終了だ。これで先に進める。シンデレラは心の中でガッツポーズをした。
(待ってろお城、行っちゃうぞ舞踏会♪)
テテルとリプリスがヴァンプラッシュ先生に駆け寄っている。二人の様子からして、あの先生、かなり慕われているみたいだ。
一方で、マルリアさんは自動販売機に寄りかかっている。口をあけたまま、ぼーっと宙を見ていた。体力と気力を使い果たしたらしい。
そのあとでふと、シンデレラは自分から数メートル離れた場所に、変な物が落ちているのを見つけた。
棒状の物体だ。虹色のテープがぐるぐるに巻かれている。
見た目の印象からして、
(打ち上げ花火かな?)
コンビニとかで売っていそうなやつだ。
しかし、さっきまでこんな物あったかな? かなり派手だから、一瞬でも視界に入れば気づきそうなものだけど・・・・・・。
シンデレラはそれに小走りで近づくと、まずは周囲をきょろきょろした。
誰もこちらを見ていない。テテルも、リプリスも、ヴァンプラッシュ先生も、マルリアさんもだ。で、山賊たちは「すやすや」状態。
この隙に、シンデレラは素早く花火を拾った。
(「ねこばば」しちゃおう。何かの役に立つかもしれないし)
ヴァンプラッシュ先生との戦いではうまくいったけれど、この先どうなるかはわからないのだ。テテルたちの先生は他にもいるみたいだし、トマトジュースと爪楊枝の「爆発コンボ」が、次も通用するとは限らない。
たとえば、真っ先にテテルを狙われたら、あのコンボは確実に破綻する。彼女の爪楊枝がなければ、トマトジュースはトマトジュースのままだ。
ヴァンプラッシュ先生はそれをしてこなかったけれど、他の先生も同じようにしてくれるとは限らない。テテル抜きの攻撃パターンも、きっと必要になるはず。
(だったら、秘策は一つでも多い方がいい)
これを拾ったことは、テテルたちには黙っておこう。秘密兵器だ。「敵を欺くには、まずは味方から」と言うし。
(まあ、でも、たかだか花火だし、勝利の決定打にはならないだろうな。私、普通の民間人だし、あまり期待されても困る。最後の最後にかっこよく使って大逆転、なんてことはたぶんない)
シンデレラが再び、テテルたちの方に目をやると、
「それでは二人とも、またあとで会おう。お城で待っている」
ヴァンプラッシュ先生の体が霧状に変わっていくところだった。
先生の姿が消えると同時に、テテルとリプリスの視線がお城の方へと移動する。ヴァンプラッシュ先生は去ったみたいだ。
その直後だ。
このタイミングで、山賊の一人が目を覚ました。
リーダーらしき男だ。水色の服の上に銀のブレストアーマー。そして、白いマントをつけている。
男は周囲をきょろきょろしたあとで、テテルとリプリスを見た。
すぐに状況を理解したらしい。仲間たちは全滅して、残っているのは自分一人。
テテルが無言で爪楊枝を構えたので、男は焦り出した。
「待ってくれ。少しでいいから、俺の話を聞いてくれ。君たちを襲撃しようとしたことは謝る。本当にすまん。これには深い事情があるんだ」
すぐ近くに落ちていた白い布を振って、降参の意思表示をしてくる。
テテルが爪楊枝を下げると、男はゆっくりと立ち上がって咳払いをした。
「正直に言おう。俺は王子だ」
そう言って片方の手でわざとらしく、自分の白いマントをはためかせる。
「あーっ!」
シンデレラは思わず声が出てしまった。
この男を知っている。
「あの時のニセ王子っ!」




