Σ(゜д゜lll) がんばれー、テテルー
戦闘が再開された。
テテルとリプリスがそれぞれ、ヴァンプラッシュ先生の左右から攻撃を仕掛けている。黒い木刀と白い木刀。二人になったことで、攻撃の回数が上がっている。
だが、ヴァンプラッシュ先生には余裕で回避されていた。
シンデレラが思うに、
(やはり強い)
テテルたちが勝つ、そんな気配がまったく感じられなかった。
というのも、リプリスがそこまで強くないのだ。ヴァンプラッシュ先生とテテルの実力差もかなりのものだが、テテルとリプリスの差もはっきりしている。
テテルが二回攻撃する間に、リプリスは一回しか攻撃できていない。速さが違う。隙も多い。
とはいえ、リプリスが攻撃することで、テテルの負担を少しは減らせているのも、たしかだ。
即座に次の攻撃、というのをひたすら繰り返していた今までとは違って、わずかにだが時間的な余裕が生まれている。攻撃に変化をつけやすくなっていた。
しかし、まだまだ単調だ。あんな攻撃では、ヴァンプラッシュ先生に勝つのは難しいだろう。もっと攻撃の手数を多くしないと・・・・・・。
シンデレラは歯がゆかった。
でも、自分は普通の民間人。
ここにキナコがいないことが、本当に悔やまれる。彼女は「古流柔術」の使い手だ。
フォーテシアでも良かった。彼女ならブーメランで援護できたのに・・・・・・。
あの二人と違って、シンデレラにできるのは、せいぜい心の中で応援することくらいだ。がんばれー、テテルー。ついでにー、リプリスー。
そうやって謙虚に応援していると突然、自分の後方に人の気配を感じた。
誰かがこちらに走ってくる!
目を覚ました山賊の一人が、うしろに回り込んだのだろうか? それとも、カボチャ畑にいた兵士の一人が、ここまで追ってきたとか?
慌ててシンデレラがふり返ると、そこにいたのはツインテールのOLさんだ。リプリスの相方、マルリアさん。
どうやら彼女も、キナコやフォーテシアとは違う側の人間のようだ。いくらスーツ姿とはいえ、走る姿勢がさまになっていない。普通に足が遅かった。
(あれなら、私でも勝てそう)
馬車の中で少し話しただけだったが、シンデレラは親近感を覚える。
しかし、それはつまり、戦力としては期待できないということ。
(いや、足は遅いけれど、ひょっとしたら・・・・・・)
ああ見えて強い、そんな可能性に少しだけ期待してみる。でも、キナコに投げ飛ばされていたしなぁ・・・・・・。
「やっと着いたぁ」
足を止めるなり、マルリアさんは前かがみになった。紺色のビジネススーツが、よれよれになっている。
彼女が息を切らしている様子を見ていて、シンデレラは察した。
(この人、体力もないな)
だけど強い、とは到底思えない。テテルたちを応援する人間が、この場に増えただけである。遠のくお城、さらば舞踏会。
「あのぉ、すみませんが」
マルリアさんが上目づかいで話しかけてくる。
「今どんな状況になっているんでしょうか?」
そう思うのも無理もない。シンデレラ自身も、わからないことがいっぱいだ。
とりあえず、わかる範囲で説明してみる。
「これも課題の一環らしくて、テテルとリプリスが今、魔女の学校の先生と戦っています。あの先生に勝ったら、たぶん先に進めるみたいです」
「じゃあ、もしもここでリプリスたちが負けちゃったら・・・・・・」
短く沈黙するマルリアさん。
そのあと、複雑な表情になって聞いてくる。
「お城に行くことができずに、居酒屋で反省会?」
「・・・・・・そうなるかもしれません。その時はおごってください」




