Σ(゜д゜lll) ひゃっはー!
俺さま山賊団が襲撃してくる数秒前。
シンデレラたち八人を乗せた馬車は、岩壁の近くに差しかかっていた。
「ん?」
最初に気づいたのはクーだ。ほとんど同時にテテルも気づく。待ち伏せの気配だ。
「団体さんがいるみたいだね。屋外パーティーとかではないみたいだけど、山賊かな?」
「私の予想が正しければ、たぶん襲ってくる」
二人の会話を聞いて、スティンクルが笑った。
「ふっふっふっふっ♪ そういうことなら、私に任せておきなさい。全員まとめて返り討ちにしてあげちゃおう。お城への手土産に、ちょうどいいかも♪」
「その必要はないと思うよ」
フォーテシアが口を挟む。
「この馬車のスピードを上げれば、簡単にふり切れると思うし」
しかし、スティンクルはやる気満々だ。近くの窓にはりついた。
彼女と同じように、シンデレラたち七人も車外に視線を向ける。
大きなカーブを曲がると、岩壁が途切れた。
そこでシンデレラたちは目にする。
謎の集団がいた。数は二〇人以上。全員が馬に乗っていて、ハロウィンのコスプレっぽい格好をしている。
そういう趣味の山賊たちか? この辺りは夜になると、治安が悪くなるそうだし・・・・・・。
すでに山賊たちは、こちらに向かって馬を走らせている。
が、彼らのほとんどが唖然としていた。そのため、馬の加速が中途半端になっている。
シンデレラは満面の笑みを浮かべながら、この謎の山賊たちに少しだけ同情した。
というのも、こっちは普通の馬車じゃないのだ。通常の馬車八台分はあろうかという、超巨大馬車である。で、シンデレラたちが乗っているのは、その二階部分だ。
先ほどカボチャをたくさん手に入れたので、こんな贅沢をしてみた。この馬車はパワーもスタミナもあって、装甲も厚い。内部にエンジンを搭載しているので、馬は不要だ。ノーパカパカ。
山賊たちは今、こう思っているに違いない。ちんけな馬車だと思ったら、相手は超巨大馬車だったよ!
馬車の側面にある大きな窓を、スティンクルが全開にした。
「ひゃっはー!」
さっそく魔法での攻撃を始めている。彼女の手から発射された光弾が、山賊たちの間を飛んでいった。
そのあとも光弾をいくつか放っているが、
「むむむっ、当たらない! あの山賊たち、勇者の末裔か何かかも。じゃないなら、魔王軍の残党か。ずるいぞ、よけるな! 紳士なら当たれー! そうじゃなくても当たれー!」
しかし、スティンクルの光弾、小学一年生が投げるドッジボールくらいのスピードだ。山賊たちに余裕で回避されている。
見かねたフォーテシアが、
「援護するね」
護身用の「折りたたみ式ブーメラン」を開いた。
「オーケー、援護よろしく。この美少女二人の連携で、あいつらをコテンパンにしちゃおう♪ もう謝るだけでは、許してあげない!」
スティンクルがまたもや魔法の光弾を連続で放った。
やはり遅い。当然ながら、今回もよけられている。
が、その直後だ。フォーテシアの投げたブーメランが、ある山賊の側頭部に命中する。それで上半身が大きく横に傾いた。
その顔面にスティンクルの光弾が命中する。
たとえスピードは小学生のドッジボールでも、威力は別次元だ。スーパーヘビー級ボクサーの全力パンチに匹敵する。
鼻血まみれになって、山賊の一人が落馬した。
それを見て、
「じゃあ、ぼくも」
クーが金色の手裏剣を取り出した。
「遠隔攻撃は得意な方じゃないから、私も練習しようかしら。あの中に賞金首でもいたら、ラッキーだし」
リプリスが魔法で、手のひらサイズの雪玉をつくり出す。ほのかに青白い光を発しているので、ただの雪玉ではないようだ。
そんな二人の横で、
「よいしょ、っと」
爪楊枝を構えるテテルだったが、
「テテルはダメ!」
クー、スティンクル、リプリスから同時に文句が飛ぶ。テテルが参加すれば、一分と経たずに、この『山賊撃退的当てゲーム』は終わってしまう。
「わかった。私は反対側を警戒している」
だが、次の瞬間、テテルは気づいた。山賊たちに混じって、ある気配を感じたのだ。これって、まさか・・・・・・。
クーも手裏剣を投げる手を止めて、テテルの方を見た。
二人は無言でうなずき合う。今の気配に、まだスティンクルやリプリスは気づいていないようだ。だったら・・・・・・。
テテルはすぐさまシンデレラの腕をつかむと、
「私を信じて、ついて来て」
そんなことを急に言われて、シンデレラは戸惑った。
しかし、テテルは止まらない。反対側にある窓を全開にすると、シンデレラの腕を強く引っぱって、車外へ飛び出した。二人一緒にだ。
「ほへ?」
いきなりの道連れダイブに、シンデレラは驚く。
顔に強風が当たっていた。そして、足の下には何もない。二階の高さからの空中ジャンプだ!
シンデレラは瞬時に、視線を馬車の方に向ける。助けを呼ぼうとしたが・・・・・・。
クーが超巨大馬車を加速させた!




