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カボチャが値上げ、怒りのシンデレラ (Pumpkin price hike. Cinderella gets angry.)  作者:
第四章

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Σ(゜д゜lll)  ぐるぐる巻き巻き

 リプリスとの話がまとまると、シンデレラはキナコの方に目をやった。


 二〇メートルくらいはなれた場所に、キナコとクーがいる。


 ツインテールのOLさんは、まだ目をましていないようだ。キナコの『はし一本いっぽん背負せおげ・みたらし』、あれを食らったあとに失神しっしんしてしまった。


(あっちはもう少しかかりそうだな)


 なので、シンデレラは別の方向に歩いていく。テテルとリプリスもついてきた。


 若葉色のセーラー服を着た女の子、フォーテシアが兵士たちを一人ずつ、ロープでぐるぐるきにしている。


 兵士たちは気絶きぜつしているので、抵抗ていこうはない。武器もすべて回収済みだ。カボチャの人型とカボチャのブルドーザーで、三〇人近い兵士たちに勝ってしまった。これがスティンクル、彼女の実力。


 気絶きぜつしていないのは指揮しきかんだけだ。他の兵士たちよりも高級なよろいを着ている。フォーテシアの手で真っ先にしばられて、今は地面の上に正座せいざしていた。


 その前にはスティンクルがいる。


 彼女は指揮しきかんの顔のすぐ前で、


「あっぷっぷー♪」


 なかなか楽しそうなことをしている。あれはおそらく「にらめっこ」。


 シンデレラの位置からだと、スティンクルの顔は見えないが、指揮しきかんは必死にこらえているようだ。たぶん負けると、ばつゲームでもあるのだろう。


「スティンクル、その人と少しお話させてもらってもいい?」


 リプリスが声をかけると、


「えー、今いいところだったのにー」


 こちらをふり向いた時、スティンクルの顔は「にらめっこ仕様しよう」を解除かいじょしていた。


 直後に指揮しきかんき出す。ここまでこらえていたが、気がゆるんだらしい。


「あー、笑うのがもう少し早かったら、ばつゲームだったのにー」


 その声はそこまで残念ざんねんそうではない。


 シンデレラたちの方にってくるスティンクル。


 彼女スティンクルの頭をなでなでしながら、リプリスが指揮しきかんに言う。


「あなたにおねがいがあります。私たちのことはだまっていてください。部下の方々にも、それを徹底てっていさせてください」


 口調くちょうおだやかだが、「異論いろんみとめない」というしんの強さを感じる。


「だから、あなたたちのやとぬしには、こんな風に報告ほうこくしてください」


 そこでリプリスがスティンクルにたずねる。


はたけおりからは、どうやって脱出だっしゅつしたの?」


「もちろん、こうだよ。こーんな感じ」


 スティンクルが両手をむねの前にかまえてから、一気に左右さゆうへと広げた。


 そのジェスチャーで、シンデレラは理解する。かぎさんかせの、なかなかパワフルな脱出だっしゅつほうだ。


 リプリスは「ふむふむ」とうなずいてから、


「じゃあ、おなかのすいた野生やせいのゴリラ、そのれにおそわれたということで」


 それを聞いて、シンデレラはハッとする。


「その案、ったー!」


 いそいで止めに入る。ゴリラはまずい。非常にまずい。


 ここまでの道中で自分たちは、ゴリラのぐるみ姿を警官に目撃もくげきされているのだ。


 あの時の会話が頭によみがえってくる。


 ――おしろばれました。舞踏会ぶとうかい余興よきょうらしいです。


 ――じゃないと、こんな格好かっこうで夜に出歩かないですよ。


 あの警官は「おだんご屋さん」の常連じょうれんだ。シンデレラやキナコのことを知っている。


 そして、わかれてからそれほどっていない時間、それほどはなれていないカボチャばたけが、「ゴリラのれにおそわれた」となったら・・・・・・。


「ゴリラはダメ! 絶対反対! ゴリラは人間の友だち! あいすべき生き物! ウホウホ、ウホウホ、ウホホホホッ!」


 この熱意ねついが通じたのか、


「・・・・・・ゴリラじゃなくて、山賊さんぞくにしましょうか」


「ウッホ♪」


 そこにフォーテシアもくわわる。兵士たち全員の拘束こうそく完了かんりょうしたらしい。


 拘束こうそく作業さぎょうをしながらも、ここまでの話は聞いていたようで、


「こうするのはどう?」


 山賊さんぞくがカボチャばたけおそったのは、そのはたけを所有する貴族きぞくへの警告。次はやかたおそうぞ。


 それなら貴族きぞくは、ここにいる兵士たちを解雇クビにはしづらい。山賊さんぞく襲撃しゅうげきを考えれば、やかたを守る兵士は、一人でも多い方がいいのだ。少なくとも、安心できる戦力がととのうまでは、彼らをやとい続けるだろう。大量のカボチャをぬすまれるという、今回の失態には目をつぶる可能性が高い。


 さっそくリプリスが魔法で、「山賊さんぞくからの脅迫きょうはくじょう」を偽造ぎぞうし始めた。ちゅういた紙の上に、かろうじて判読はんどくできるくらいのきたな文字もじならんでいく。誤字ごじ脱字だつじも多い。


 その様子ようすをシンデレラはじっと見ていた。こんな魔法もあるのか。


(ひょっとして、お金も偽造ぎぞうできるんじゃ・・・・・・)


 しかし、それにテテルやリプリスが気づかないだろうか。


 いや、ないな。お金を偽造ぎぞうできるのなら、すでに使っているはず。


 リプリスが「山賊さんぞくからの脅迫きょうはくじょう」を完成させる。


 それを指揮しきかんが着ているよろい隙間すきまんだ。


 そのあといきなり、


「えいっ!」


 大ジャンプしてからの「急降下かかと落とし」!


 気絶きぜつした指揮しきかんを見て、シンデレラは思った。リプリスは脚部きゃくぶに「純白じゅんぱくの防具」をつけているので、今のはなかなかいたそうだ。


 本人も「やりすぎちゃったかも」と思ったらしく、あわてて指揮しきかんの生死を確認している。


 ・・・・・・どうやら問題ないようだ。相手は気絶きぜつしているけれど、リプリスが小声で、「ごめんなさい、ごめんなさい」とあやまっている。


 この間に、シンデレラはフォーテシアから次の話を聞いた。


 彼女フォーテシアが言うには、気絶きぜつしている兵士たちの何人かに対して、わざとロープゆるめておいたらしい。全員がしばられた状態で、野生やせい動物や山賊さんぞくにでもおそわれたら、大変だからだ。彼らが目をましたら、自分のはもちろん、仲間たちのロープほどくだろう、ということだった。


「そうなるまで、あと十五分くらいだと思う」


 だったら、その前にここを立ち去らなければ。


(あっちはどうなっているかな)


 シンデレラがふたたびキナコとクーの方を見ると、ツインテールのOLさんがようやく意識いしきを回復したらしい。あっちでもキナコが、「ごめんなさい、ごめんなさい」とあやまっている。


 OLさんの様子ようすからして、すぐに出発しても問題なさそうだ。


 シンデレラが見ている前で、テテルたち四人が魔法を使う。カボチャを乗り物に変えた。


 それに乗りんで、いざ、おしろに向かって出発だ。


 ところが、シンデレラたちはまだ知らない。


 この道の先に、あやしげな一団いちだんひそんでいることを・・・・・・。


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