Σ(゜д゜lll) コーヒーブレイク(前編)
テテルはヴァンプラッシュ先生の研究室にいた。
研究室といっても、ここには応接スペースがついている。
ソファーの上で縮こまるテテルに対して、
「こんな時間だ。眠たいかもしれないが、少し説教する。だが、その前に・・・・・・」
ヴァンプラッシュ先生が温かいコーヒーを入れてくれる。
「角砂糖はいくつにする?」
「え、えっと、先生はいくつですか?」
「そうだな、一個にしようかなと思っている」
「じゃあ、私も同じで」
「ミニトマトは?」
「・・・・・・い、一個でお願いします」
ヴァンプラッシュ先生はコーヒーにミニトマトを入れるのだ。先生の一族、『ホーリーヴァンパイア』の習慣なんだとか。
で、テテルも「その味が嫌いではない」という「設定」にしている。本当は少し苦手なのだが、ヴァンプラッシュ先生の前では「背伸び」をしていた。
先生はミニトマトの鉢植えから、実を一個もぎ取ると、それを専用の器具にセット。果汁をしぼり、テテルのコーヒーに加えた。
さらに自分のコーヒーにも同じことをしている。
「さて、テテル。卒業前のイタズラを今夜、君は決行したわけだが」
ヴァンプラッシュ先生はほとんど表情を変えずに、
「困ったことになった。君は『退学』になる」
え?
テテルは目が点になった。
この学校では、多少のイタズラには寛容だ(ただし、イジメに含まれるようなものは除く)。
イタズラがばれたあとに、先生から怒られはするけれど、それで終わりだ。成績にマイナス評価がついたりしないし、ましてや『退学』になんてならない。
なのに、今回は『退学』・・・・・・。
(なんで?)
というのが、正直な感想だ。
「正確に言えば、このままだと『退学』になる。校長先生がそういうお考えだ」
テテルには衝撃の事実である。
「この学校って、校長先生がいたんですか?」
これまで一度も見たことがない。てっきりヴァンプラッシュ先生が、校長の職務も兼任しているのだと思っていた。
「校長先生は今まで、自分探しの旅に出ていたそうだ。学校に戻ってきたのは三百年ぶりらしい」
これは最悪のタイミングだった。戻ってくるなり、校長は見てしまったのだ。
校庭の隅に自分の銅像があるのだが、その頭部を魔法で「大きなたこ焼き」に変えて「ダーツ」を楽しんでいる、四人の不届き者たち。
ヴァンプラッシュ先生の話を聞きながら、テテルは冷や汗をかいていた。
あの時はものすごく盛り上がったので、よく覚えている。・・・・・・楽しかったな、屋外での『たこ焼きダーツ』。
というか、あの銅像のモデルが校長先生だったことを、今初めて知った。
あれって、謎のおっさんの銅像じゃなかったのか。過去の先輩たちによる、イタズラの「なごり」か何かだとばかり・・・・・・。




