Σ(゜д゜lll) この学校の『伝説』に(その七)
この時、黒い森の中を逃走していたリプリスは、テテル以上の悪寒に襲われていた。
これは自分の担任の仕業だ。やばいと感じて、逃げるのはあきらめる。
ところが、足を止めても悪寒が消えない。
数秒後、真上からいくつもの水滴が落ちてきた。
リプリスは思わず、空をを見上げる。
途端に、水滴の数が激増した。
血の雨だ。なのに、星空が見えている。血の匂いも感じない。こうして雨が降っているのに、黒いローブは濡れていなかった。
(これは幻術?)
全身の寒さが厳しくなってくる。体の外側だけでなく、体の内側もだ。体内の骨がどんどん氷に変わっていく、そんなイメージが頭の中から消えない。
(ちょっと待って! 本当に足が凍ってきている!?)
リプリスは慌てて炎の魔法を使おうとした。
しかし、氷の進行が速すぎる。すでに腰のあたりまで到達していた。炎の魔法が間に合わない。
となると、最後の選択肢は、
「せんせい、ごめんな・・・・・・」
反省しています、そんなアピールをしようとしたが、時すでに遅し。
黒い森の中で氷の像が完成した。
木々の間から、ピンクのダッフルコートを着た男が現れる。ヴァンプラッシュ先生とはタイプが違うが、こちらも美形だ。
「僕は教育熱心な方じゃありませんが、悪いことをした生徒には、お仕置きが必要ですよね?」
動くことのできないリプリス。その顔に、男は自分の左手を近づけていく。
そして、リプリスの顔を一気に貫いた!
が、氷の像に穴はあいていない。
リプリスの後頭部に突き抜けた左手、その指を男は曲げたり伸ばしたりしながら、
「この状態でしばらく頭を冷やすのも、悪くないと思いませんか? 僕の授業でも、よく言ってるでしょ。いかなる時も冷静な判断が大事。でないと、死ぬこともありますよ」
そこで、フッと笑うと、
「僕みたいにね」
この男は幽霊だ。ただし、幽霊といっても、『未来ゴースト』という謎の種族。
幽霊なので、こうして物体をすり抜けることが可能なのだ。
リプリスを凍らせたのもそうだが、彼女の安全にはきちんと配慮している。これでも教師だ。とりあえず、この学校をまだ解雇にはなっていない。新しい魔法の実験台に生徒を使うなと、ウルフ卿からよく注意されてはいるが・・・・・・。
「さて、これで捕まえたのは三人ですか。もう一人は今も逃走しているみたいですね。ゾーンビルドくんは負傷しているようだし、僕は親切な方じゃありませんが、お手伝いに行った方が良いと思いませんか?」
未来ゴーストの【エクスアイズ】は、氷の像になったリプリスに語りかける。
「試してみたい魔法が、他にもあるんですよ」




