Σ(゜д゜lll) この学校の『伝説』に(その六)
テテル対ヴァンプラッシュ先生。
その勝敗は一瞬で決まる。
テテルはまったく抵抗せずに、降参を選んだ。
逃げるのは無理だ。『瞬間移動』は使えない。
あの魔法は、先生や他の魔女(『見習い』も含む)が近くにいる状況では、使うことができないのだ。
そして、自分にはクーほどの脚力はない。まあ、ヴァンプラッシュ先生が相手だと、クーでも追いつかれそうな気がする。
戦うのも論外だ。自分が勝てるとは思えない。ヴァンプラッシュ先生がものすごく手加減してくれるのなら、少しは可能性もあるが、今の状況では・・・・・・。
だったら、あっさり降参するに限る。
「大人しくついてくるように」
ヴァンプラッシュ先生が言う。直前までの冷たい雰囲気はどこへやら、授業中と変わらない雰囲気に戻っている。
魔法の手錠などで、こちらの動きを制限することはしないようだ。信用してくれているのがわかる。
(ヴァンプラッシュ先生に捕まったのは幸運だったかも)
そう思った直後だった。
東の方で閃光が走る。
テテルは反射的に目を向けた。あれはおそらく、スティンクルの『光収束』。どうやら、彼女も見つかったらしい。
で、スティンクルは戦闘を選択したようだ。
(相手はゾーンビルド先生かな)
しかし、次の瞬間だった。さらなる閃光が弾ける。一回目よりも圧倒的に強い光だ。テテルは思わず目をつぶる。
耳に小さく聞こえてきたのは、スティンクルの悲鳴だった。
数秒後、まぶたの外から明るさが消えたのを感じて、テテルはゆっくりと目を開く。まだ少し目の中にまぶしさが残っていたものの、短い時間で回復した。
その時になって気づく。周囲に即席の魔力フィールドが張ってあるのだ。あの一瞬で、ヴァンプラッシュ先生が展開したらしい。
「目は大丈夫か」
「はい。大丈夫です」
先生の魔力フィールドがなかったら、まだ回復していなかっただろうな、とテテルは思った。
「それなら問題ないな。少し急ごう」
ヴァンプラッシュ先生のうしろを走りながら、テテルは考える。
二回目の閃光でわかった。スティンクルが戦っていた相手。
彼女の担任、ウルフェニックス先生だ。
あの二回目の閃光こそ、正真正銘の『光収束』。ウルフェニックス先生のことだから、生徒相手にかなり手加減しているとは思うが、あれでスティンクルは戦闘不能だろう。
あとは、クーとリプリスだが・・・・・・。
突然、テテルは悪寒がした。
ヴァンプラッシュ先生が再び即席の魔力フィールドを張る。
寒けが急速に和らいでいった。今はもう、春の日差しの中にいるようだ。
安堵の息をつきながら、テテルは考える。
自分たちの担任は四人。ヴァンプラッシュ先生、ゾーンビルド先生、ウルフェニックス先生、そして、もう一人いる。
先ほどの悪寒は間違いない。あの先生も近くに来ている。




