Σ(゜д゜lll) この学校の『伝説』に(その四)
四人は思わず息を飲む。
互角か、いや、流星の方が上回っている!
左手で流星を受け止めているゾーンビルド先生だが、
「出力上昇! 緊急排熱! 補助動力始動!」
かなり早口で独り言をつぶやいている。
ゾーンビルド先生の背面からは白い蒸気が、ものすごい勢いで排出されていた。先生の後方にある時計台が見えなくなるほどの量だ。
しかも、左腕に右腕を添えると、その周囲に新たな魔法陣をいくつか出現させている。
やはり、あれは防御系の魔法陣のようだ。でなければ、流星の威力に腕が耐えきれないはず。
しかし、あの数の魔法陣の支援があっても、左腕の周囲を黄色い火花が走り回っていた。先生の体がずるずると後退していく。
このまま時計台に激突してしまえ。そう祈るテテル、クー、リプリス。
そんな中、スティンクルだけが違った。
彼女は祈りなどしない。
「とりゃー!」
攻撃的な魔力を拳に急速集中させると、流星目がけて撃ち出した。先生をスクラップにするための、アシストをする。
流星の威力とは比較にならない一撃だが、ぎりぎりで耐えているところに、最悪のおまけをぶっ込んできた。
ゾーンビルド先生が大きく後退する。
先生の独り言がさらに速くなった。
「出力上昇! 制限解除! 出力上昇! 制限解除! 出力上昇! 制限解除!」
普段は抑えている力を次々と制限解除して、どうにか耐えるゾーンビルド先生。
先生の排出した蒸気で、時計台の文字盤は見えなくなっている。が、体ごと叩きつけられるのも時間の問題だろう。スクラップへのカウントダウン。
スティンクルは再び拳に魔力を急速集中させると、
「どーしました、せーんせっ♪」
満面の笑みで、二発目のアシストを撃ち出した。
ゾーンビルド先生の外見が、特撮ヒーローのような金属スーツなので、彼女はまるで悪役だ。正義のヒーローを始末しようとする、悪の組織の幹部である。
スティンクルはノリノリな声で、
「そんな機能が本当についているのかは知りませんけど、せーんせっ、その頭の中の脳みそだけは、『緊急脱出』させた方がいいんじゃないですか?」
そういう噂があるのだ。ゾーンビルド先生の頭は着脱式で、緊急時には「すぽーん!」と外れるとか。
そこでスティンクルは凶悪な笑みに変わると、
「でも、そうなった時、私は先生の頭をもちろん狙い撃つし、こっちにはテテルがいるのをお忘れなく。遠隔攻撃の命中率は正確無比。先生の脳みそ、撃墜されちゃうかも♪ わーおー、ぼかーん♪」
そして、スティンクルが胸の前で両腕を交差させる。
テテルたち三人は戸惑った。ストレッチでもしているようなポーズに見えるが、これは・・・・・・。
三人の頭に同じイメージがよぎる。このポーズは、「ある必殺技」の初期動作だ。
ここは彼女を止めるべきか、どうするか。あんなものを使ったら、スクラップを通り越しちゃうかも。でも、相手は「最高の防御力」を持つゾーンビルド先生だし・・・・・・大丈夫だよね?
三人が迷っている間にも、スティンクルはさらに続きの動作を行う。両腕の交差を解除すると、体の右側で構え直した。
彼女の両腕に魔力が急速集中していく。さっきの二発とは比較にならない量だ。
これは、スティンクルの担任、【ウルフェニックス】先生が使う必殺技だ。その見よう見まね。
この技で彼女は、学年末の模擬戦闘試験で、ゾーンビルド先生に「かすり傷」を負わせている。




