Σ(゜д゜lll) このシチュエーションはやばい(後編)
(ひょっとして、最初から・・・・・・)
フォーテシアとスティンクルは、兵士たちを出し抜くために、先にわざと捕まっていた? で、ちょうど畑の近くにいた私たちを見つけて、囮にした?
あり得ない話ではなかった。
そして、当初の計画通り、ああやって兵士たちをシンデレラたちの方にけしかけておいて、その間にフォーテシアとスティンクルは檻を脱出。兵士たちに邪魔されることなく楽々と、大量のカボチャをゲットした。
そんな可能性に気づいて、シンデレラは不機嫌になる。
(こっちは貧弱なカボチャを一個買うのでさえ、あんなに大変だったのに)
とはいえ、カボチャの人型やカボチャのブルドーザーが今、兵士たちを倒してくれているのは事実。
何の相談もなく囮にされたのは頭にくるものの、どうやら最初から、こうして助けにくることまで織り込み済みだったようだ。
だから、さっきフォーテシアはお城の方を指差したのだろう。このあとお城に向かうことを考えれば、シンデレラたちがそっちに逃げてくれた方が、移動距離の無駄がない。
(だとしたら、私ってすごくないか?)
フォーテシアのサインを見逃さず、それを信じたことで、今の状況が完成したのだ。
鋭い観察力、的確な分析力、(女子会)仲間を信じる心、そして、ちょうど良い足の速さ。どれか一つでも欠けていたら、今の状況にはなっていない。
真っ先にシンデレラがお城の方へ逃げたことで、キナコも道連れ。テテルとクーも同じ方向へ逃走することになったのだ。
(おお! そんな風に考えると、私すごいぞ!)
テテルが褒めてくれないので、自分で褒めることにする。今回のMVPだ。
そうやって心の中で笑顔になっていると、
「カボチャがたくさん手に入ったことだし、なかなか良い作戦だったでしょ?」
背後から声がした。
シンデレラがふり返ると、黒いドレスの女の子がすぐそばまで来ている。『四人目』の魔女だ。両腕と両脚には「純白の防具」をつけている。
「【リプリス】」
テテルがつぶやくのを、シンデレラは聞き逃さなかった。
ふーん、それがこの魔女の名前か。
彼女が防具の隙間から、何かを取り出した。羊皮紙の契約書だ。
そして、次のように言ってくる。
「テテル、私たちと共闘しない?」
これに対して、テテルは小さく息を吐くと、
「スティンクルにしては変だと思っていた。こういう作戦を立てるとしたら、お前の方」
どうやらテテルは、この魔女が立てた作戦だと、途中から気づいていたらしい。
「あの子とは、すでに共闘関係にあるの。答えは決まっているようなものだと思うけど、どう?」
黒いドレスの魔女はそこから先、急に小声になって、
「そもそも、あなたはとっくに気づいているんでしょ?」
短い沈黙のあとで、テテルは相手の目をじっと見てから、小さくうなずいた。
「さっき契約書を見返していて気づいた。今回のミッション、『私たちの一人だけがクリアできる』という競争じゃない」
そこで大きく息を吸うと、
「『四人全員がクリアできる』、そんな方法が存在する」




