Σ(゜д゜lll) まあ、こうなるわな(前編)
キナコを追って、テテルとクーも加速する。
これまで以上にシンデレラは焦った。もう手錠はないのだ。あの三人との差がどんどん広がっていく。
一方で、兵士たちの足音は着実に迫ってきていた。このままだと自分だけが捕まる。
しかも、さっきまではなかった震動が、地面から伝わってくるのだ。
たぶん乗り物だろう。それっぽい音もするし。重機とかそういう感じの震動と音とが、兵士たちのさらに後方から、こちらに迫ってきていた。
やばい、本当に捕まる。こっちは徒歩なのに。兵士たち、ずるいぞ。
それでもシンデレラはあがいた。全力で走り続ける。と同時に、先頭にいる兵士たちが一斉に転ぶのを、本気で期待した。
(転べー! ネズミ花火のように派手に転べー!)
そんな大ピンチだというのに、前を行くキナコたちは全然待ってくれない。あの三人、なんて速さだ。追いつけないどころか、ますます差が広がっていく。
その上、追いかけてくる兵士たちが、
「待てー! シンデレラー!」
ああ、心が折れそうだ。本名が完全にばれちゃっている。カボチャ泥棒をしていないのに、すでに「おたずね者」扱いだ。
(誰でもいいから助けてー!)
もはや自分一人の力で、どうにかできる状況ではない。
その時だ。シンデレラは見つけた。
キナコたちの前方に誰かがいる。二人組だ。
先回りをした兵士たち、そんな展開を少しだけ期待する。私一人だけ捕まるのは嫌だ。キナコたち三人も捕まってしまえ。檻の中で女子会をしよう。
しかし、その二人組、どうやら兵士ではないっぽい。
片方は紺色のスーツ姿だ。どう見てもOLさん。しかも、あのツインテールには見覚えがあった。
(あの人ってたしか、キナコの「おだんご屋さん」の常連さん)
休日に一人でお酒を飲んでいるのを、頻繁に目撃していた。
そして、二人組のもう片方は、黒いドレスの女の子だ。
頭には「縁のついたとんがり帽子」、両腕と両脚には「純白の防具」をつけている。
さらに、テテルと同じマントをしていた。「内側が白で外側が黒」というマントだ。あと、腰のあたりには、『見習い』と書かれた丸いバッジもある。
さっきカボチャ畑の近くでクーが言っていた、『四人目』の魔女だろうか?
じゃあ、あのOLさんが、キナコとフォーテシアに続く、今夜の王子さま争奪戦のライバル?
黒いドレスの女の子は軽く会釈をすると、
「テテルとクー、こんばんは。二人とも今すぐ止まりなさい」
ここでキナコが再加速する。
先頭争いをしていたライバル二人、テテルとクーを引き離すと、さらに進路を微調整。道の端を駆け抜けようとする。
そこにOLさんが立ちふさがった。
しかし、「そんなの関係ない!」とばかりに、キナコが猛突進する。
で、瞬時に相手の腕をつかむと、
「えいっ!」
ツインテールのOLさん、その体が大きく宙を舞った。




