表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/129

Σ(゜д゜lll)  カボチャ泥棒チャレンジ(後編)

「フォーテシアちゃんがつかまっちゃってるね」


 キナコが事実をありのままに言う。


 シンデレラは無言でうなずいた。フォーテシアは普段から、おっとりした子だ。おりの中でも、それは変わらないらしい。退屈たいくつしのぎに、あれはたぶん、『お目々のラジオ体操たいそう』をしている。


 でも、ああ見えて彼女は頭が切れるのだ。


 そして、そのことをシンデレラとキナコは知っている。


 おそらくフォーテシアは今、『お目々のラジオ体操たいそう』をしながらさりなく、兵士たちの配置はいちや彼らの巡回じゅんかいルートを調しらべている。


 そこでシンデレラはフォーテシアと目が合った。


 すると、彼女が視線を横にずらした。


 その意図いとがシンデレラにもわかる。あのまま一点を凝視ぎょうししていたら、「あそこにだれかいるよ」と兵士たちに教えるようなものだ。


 フォーテシアが『お目々のラジオ体操たいそう・第二』を始めた。


 で、おりの中にはもう一人、女の子がつかまっている。


 その姿を見て、テテルが小さくため息をついた。


「【スティンクル】がつかまっている」


 クーが「だよね」という顔になった。


 こっちは二人の知り合いらしい。黒いセーラー服の上に、銀色のかわジャンを着た女の子だ。あのかわジャン、りょうそでが切り落とされていて、「ノースリーブ」になっている。


 兵士たちがやったものとは思えない。たぶん、あの子の趣味しゅみだ。かわジャンを自分で加工かこうしたのだろう。


 あと、お約束のように、「ふちのついたとんがり帽子ぼうし」と「見習いバッジ」だ。


「で、どうする?」


 クーがテテルに話しかけた。その表情はくもっている。


「どうする、というよりも、どう考えるかの方が大事。私たち以外に、スティンクルもいるってことは・・・・・・」


「『四人目』もいる、そう考えるのが自然しぜんか」


 みじか沈黙ちんもくのあとで、魔女二人が同時にため息をつく。


 ただし、クーの表情がさらにくもっているのに対し、テテルの表情はあまり変わっていないようだ。『四人目』がいる可能性を、もともと考えていたらしい。


 そんな二人の様子ようすながめながら、シンデレラは頭を整理する。「テテル」と「クー」と、あのおりの中にいる「スティンクル」という子で三人。クーが『四人目』と言っているから、さらに魔女がもう一人いる?


 シンデレラは回想かいそうした。テテルとの契約けいやく自分こっちはノーリスクだが、彼女テテルは『退学たいがく』というリスクをっている。


 スーパーでキナコに聞いた話だと、クーも同じ状況じょうきょうらしい。キナコが王子さまと結婚けっこんできなければ、魔女の学校を『退学たいがく』になるとか。


(じゃあ、あのスティンクルや『四人目』も・・・・・・)


 王子さまと結婚けっこんできるのは、シンデレラたちの中の一人だけ。だから、このミッションを達成できる魔女も一人だけだ。


 つまり、四人の魔女の内、三人が『退学たいがく』になる。


 この国の王子さまが「」だった、なんて話は聞いたことがないし、


(魔女の世界ってきびしいんだな)


 しかも、ミッション成否せいひの最重要部分を他者にゆだねていて、魔女自身にできることはサポートのみだ。


 テテルが『退学たいがく』にならないためには、シンデレラ自身ががんばる必要がある。


 王子さまの顔は知らないけれど、性格は「まとも」だといううわさだし、権力けんりょく経済力けいざいりょく保証ほしょうつきだ。隣国りんごくとの関係も良好りょうこうみたいだし、国民に一揆いっき革命かくめいを起こされる心配しんぱいも、今のところはなさそうだ。あと、王子さま直属の執事しつじが、ものすごくかっこいいらしい。


 ・・・・・・ふむ、そっちでもいいな。その時はすまん、テテル。


 とはいえ、舞踏会ぶとうかいには、自分たち以外にも女の子がたくさんいるはず。ライバルは多い。


(ばれないように料理にっちゃおうかな? 即効性そっこうせい強力きょうりょく下剤げざい、『トイレの恋人こいびとくん』の出番かも)


 そんな工夫インチキでもしないかぎり、テテルたちが四人まとめて、『退学たいがく』になる可能性が高いような・・・・・・。


 そうなった時、シンデレラにできるのは、舞踏会ぶとうかい満喫まんきつした笑顔を全力でこらえて、ものすごく悲しい表情をするくらいか。


 その場合にそなえて、テテルやクーに気づかれないように、あとでこっそりキナコとち合わせしておこう。「ウソきするのは、このタイミングで」とか。


「スティンクルが、ぼくたちに気づいたぞ」


 クーがテテルに言うのを聞いて、シンデレラは頭の整理を中断した。


 カボチャばたけの方を見ると、銀色のかわジャンを着た女の子が、おりの中からこちらを見ている。


 まずい、ガン見だ。あの子、凝視ぎょうししている。バカ、やめろ。私たちの存在が、兵士たちに気づかれるだろうが。


 そこで彼女スティンクルがニヤリとした。


 そして、いきなり声をり上げる。


「兵士のみなさん、あいつらです! あいつらが私たちに言ったんです! あのはたけからカボチャをぬすんでこないと、ひどい目にわせるって! 本当です! ウソじゃないです! あいつらが黒幕くろまくだ! 私たちはだまされただけ! さあ、兵士のみなさん、今こそ出番ですよ! かっこいいところを見せてください! ここにいる美少女二人が、全力で応援おうえんしていますよ!」


 その発言をすべて信じたわけではないだろうが、兵士たちがこっちに向かってくる。


 最悪の展開だ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ