Σ(゜д゜lll) カボチャ泥棒チャレンジ(前編)
星空の下、四つの影がお城に向かって進んでいた。
ゴリラの着ぐるみが四体。シンデレラたちである。
どうしてこんな格好をしているのかというと、ここに来るまでに色々あったのだ。
住民たちが助けを求めてこないよう、警官の服装をやめて、ブレザーの制服にしたら、今度は不審者が寄ってきた。
テテルとクーが撃退したものの、新たな不審者が次から次へとやってくる。警官姿の時には、まったく寄ってこなかったのに・・・・・・。
そこで次に選んだのが、このゴリラの着ぐるみだ。ここら一帯には猟師さんも野生のゴリラもいないから、たぶん安全なはず。
それ以降、不審者の出現は止まった。ウッホ、ウッホ、ウッホ、ウッホ。
しかし、自転車に乗った警官に見つかってしまう。最悪の展開だ。くるぞ、職務質問。
ところが、その警官は「おだんご屋さん」の常連だった。
なので、キナコが着ぐるみから顔を出して、愛想良く対応する。
「お城に呼ばれました。舞踏会の余興らしいです」
シンデレラもフォローする。
「じゃないと、こんな格好で夜に出歩かないですよ」
これを警官は信じた。「テテルとクーは、傭兵ギルドで雇った用心棒」という話も信じた。
警官が去ると、速度を上げる四人。ウホ、ウホ、ウホ、ウホ、ウホ、ウホ、ウホ、ウホ。
十分後にようやく、カボチャ畑の看板が遠くに見えてきた。
「私の考えが正しければ、畑の近くで野生動物の姿はまずい。見張りがいた場合、警告なしで攻撃してくるかも」
そう言って、テテルが魔法を解除する。四人とも元の姿に戻った。
「まずは、ぼくが畑を偵察してくる。みんなはこの辺に隠れていて」
クーが一人で先行した。
警備の人間がいる可能性を考えると、良い判断だとシンデレラは思う。たとえ見つかったとしても、犠牲は一人だけで済むのだ。しかも、その犠牲は自分ではない。
とはいえ、クーが走り去る様子を見る限り、彼女が捕まるとは思えなかった。キナコよりも足が速いみたいだし、ものすごく身軽だ。ただ、あの「赤い月夜に、吠える金色の竜」は、非常にめだつような・・・・・・。
とりあえず、シンデレラたち三人は道から少し外れた場所に移動して、クーが戻ってくるのを待った。
その間、キナコとのおしゃべりを楽しむシンデレラ。
一方でテテルは、あの契約書を何回も読み返している。何か気になることでもあるのだろうか。
すると突然、カボチャ畑の方からクーの悲鳴が!
なんてことは全然なくて、
「すごいよ、カボチャがたくさんあった」
やや硬い表情でクーが戻ってくる。
「ただし、見張りの兵士たちもたくさんいるよ」
そりゃそうだ、とシンデレラは思った。今やカボチャは高級食材だ。山賊とかが狙っていてもおかしくない。
「それとだけど・・・・・・」
少しの間、クーは無言になると、
「『あれ』は口で説明するより、直接見て欲しい」
兵士たちに見つかりにくいルートを選んで、他の三人を畑の方へと引率した。
シンデレラは身を低くして、草むらの中からカボチャ畑を探ってみる。
おお、いるぞ、いるぞ、兵士のお兄さんたちが。最低でも二〇人はいると思う。
広い畑の中を巡回する彼らの足元には、たくさんのカボチャが実っていた。どれも立派だ。
――シンデレラちゃん、馬車が豪華になっちゃうね♪
出発前のキナコの言葉を思い出す。たしかに、そうだ。あのカボチャを一個でいいから、手に入れることができれば・・・・・・。
しかし、畑の真ん中には異様な物があった。
猛獣を何頭も入れておくような檻が、なぜか置いてあるのだ。
しかも、檻の中には二人の女の子がいる。たぶん、カボチャ泥棒チャレンジに失敗したのだろう。
その片方、若葉色のセーラー服を着たふわふわ髪の女の子は、シンデレラの女子会仲間だ。




