Σ(゜д゜lll) 容疑者を確保しました!(後編)
「シンデレラちゃん、馬車が豪華になっちゃうね♪」
「しかも、その先は歩かなくていいし♪」
シンデレラはキナコと一緒に笑顔になる。
現在のカボチャ事情だと、馬車に乗り始める予定地点は、貴族の畑から二キロ先だ。この距離を歩かなくていいなら、それだけお城に早く着くことができる。
「あと、このホテルを手配しておいたから。一番安い部屋だけど」
地図を指しながら、テテルが言う。お城に一番近いホテルだ。さっき一人でほんの少し会議を抜けたのは、ホテルの予約をするためだったらしい。
このホテルで一旦馬車を止めて、シャワーを利用する。何キロも歩いたあとに、畑でカボチャ泥棒までして、そのまま舞踏会に直行するというのは、さすがに無謀だ。
ホテルでシャワーを浴びたら、そのあと魔法で、シンデレラとキナコをドレス姿に変身させるという。
「お城に着いたら、同盟は解消だぞ。あとは恨みっこなし」
クーがテテルに対して、念を押してくる。
シンデレラが王子さまと結婚すれば、テテルの勝利だ。その場合、クーが魔女の学校を『退学』になる。
逆に、キナコが王子さまと結婚すれば、クーの勝利だ。その場合、テテルが魔女の学校を『退学』になる。
それに関して、テテルには何か思うところがあるようで、少しだけ考え込む仕草をしてから、
「いいよ」
そっけなく返した。
そんな二人の魔女とは真逆に、シンデレラとキナコは興奮していた。
「私たち舞踏会に行けちゃうんだ♪」
「ねー♪」
だって、自分たちはノーリスク♪
あの契約書には、『復讐禁止』の条項があるのだ。負けた方の魔女(場合によっては二人とも)に、仕返しされる心配はない。
というのも、別の条項で、契約者の安全を魔女の学校が保証しているのだ。シンデレラが契約した時のテテルの様子からして、これについては魔女の学校を信用しても良いと思う。
で、このあとお城に向けて出発するのだが、「おだんご屋さん」を出ようとしたところで、
「今の格好だと、めだちすぎない?」
シンデレラは言ってみる。普段着の自分は問題ないとして、キナコは桜色の和服だし、テテルはプレートアーマーにミニスカート。
クーに至っては、忍者装束の背中に刺繍で、「赤い月夜に、吠える金色の竜」だ。
この四人が一緒に行動するのだから、周囲の視線をひきやすい。スーパーから「おだんご屋さん」に移動した時が、まさにそうだった。
特に魔女の二人は、「舞踏会に招待されています」というより、「招待されていないけれど、殴り込みにきてやったぜ!」という方が納得されそうな服装だ。
さすがに、シャワーのあとで魔女二人もドレス姿になるっぽいが、そこまでの道中、めだちすぎるのは良くない。不審者として通報されちゃうかも。
また、こちらには魔女がいるとはいえ、女の子が四人だ。
良からぬ目的で近づいてくる、そんな不審者がいるかもしれない。夜の道中、危険である。
そういう奴、もしくは、奴らに邪魔されでもしたら、お城に着くのが遅くなってしまう。
「じゃあ、これで」
テテルが魔法をかけると、四人は一瞬で警官の服装になった。
この姿なら、自分たちは不審者と思われないし、また、不審者の方から寄ってくることもないだろう。
こうして、手錠を「ガチャリ」とされる場面につながるのだ。
シンデレラは回想をやめると、自分の手首に目をやる。この上にタオルをかければ、ほら、外から手錠はまったく見えない♪
四人は「おだんご屋さん」を出発する。
ところが、警官の服装には大きな落とし穴があった。
「助けてー! おまわりさーん!」
こんな時に限って、住民たちが助けを求めてくる。
で、無視するわけにもいかず・・・・・・。
お城まではまだ遠い。




