Σ(゜д゜lll) 容疑者を確保しました!(前編)
さて、話はシンデレラの方に戻る。
スーパーを出てから、十五分が過ぎていた。
ガチャリ。
シンデレラの右手首に、黒い金属の手錠がかけられる。
「容疑者を確保しました!」
楽しそうに言う警官。その正体は、警官のコスプレをしたテテルだ。
なお、キナコの魔女、【クー】も警官姿になっている。
そして、ガチャリ。
黒い手錠の反対側を、クーがキナコの左手首にかけた。
シンデレラとキナコが一緒に持っているエコバッグ、その中にはスーパーで買ったカボチャが入っている。
こうして二人を手錠でつなぐことで、片方がカボチャを持ち逃げするのを防ぐのだ。この魔法の手錠を解除するためには、魔女二人の力が必要になる。
だから、どちらも裏切ることはできない。お城に着くまでは同盟関係だ。
シンデレラは回想する。
今から十五分前、スーパーで最後のカボチャを買った。あのあとすぐに、キナコの「おだんご屋さん」へ行って作戦会議をしたのだ。奥の座敷で、四人で地図を広げた。
テテルとクーによると、買ったカボチャを魔法で馬車にしても、ここからお城までは、もたないという。
なにせ、スーパーに最後まで残っていたカボチャだ。それまでに買っていった客たちは、より良いカボチャを選んでいったのだろう。
今のような特殊な事情がなければ、このカボチャを買おうとシンデレラは思わない。普通のやつより小さいし、いくつも傷があるのだ。
しかし、贅沢は言ってられない。舞踏会の始まる時間が迫っている。
テテルの見立てだと、このカボチャを馬車にした場合、四人で乗っても重量オーバーにはならないが、
「私の予想が正しければ、馬車が走行可能なのは――」
お城までの距離の、せいぜい半分くらいらしい。
クーも同意見で、
「そのあと、このカボチャはハリボテ同然になるよ」
そんな状態の馬車を、仮にお城の前まで四人で押していったとして、はたして中に入れてもらえるだろうか。
門前払いされる光景が目に浮かぶ。
したがって、作戦はこうだ。ここからお城までの道のり、前半は歩いていき、後半で馬車を使う。
これなら、お城の門の前に馬車で乗りつけることができる。
お城につながる道は二本あるが、どちらを進むかはすぐに決まった。
裏道の方だ。夜になると人通りが少なく、治安が一気に悪くなる。
なので、舞踏会の他の参加者たちは、もう片方の道を使うはずだ。あっちの道には、美容室やエステサロンもそろっている。安全で便利な道だ。
それに対して、裏道の方は危険で不便。
ただし、シンデレラたちにとって、裏道には「大きなメリット」があった。
そっちの道だと途中に、貴族所有の「カボチャ畑」がある。
たぶん警備の人間がいるだろうが、これから夜だ。その畑でカボチャを、「交換」または「追加入手」できれば・・・・・・。




