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カボチャが値上げ、怒りのシンデレラ (Pumpkin price hike. Cinderella gets angry.)  作者:
第一章

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Σ(゜д゜lll)  カボチャがなければ始まらない

 王子には気がかりなことがあった。


 表向きには今夜の舞踏会ぶとうかい、「カボチャの料理をたくさん楽しんでもらう」という趣向しゅこうになっている。


 そのむねは、『招待状しょうたいじょう』にも書いてあった。一方で、「王子の結婚けっこん相手あいてを決める」というのは書いていない。


 そういうわけで、今夜の舞踏会ぶとうかいにはカボチャがたくさん必要だ。


 なのに、昨夜の流れ星で王家のカボチャばたけ被害ひがいが出たらしい。


 その真偽しんぎについてたずねると、


残念ざんねんながら事実です」


 執事しつじみとめた。


「わかっていると思うが、買いすのは最低限にしただろうな」


 まじめな顔で王子は言う。


 王家がカボチャを大量に購入こうにゅうすれば、市場にまわる量がって、カボチャの値段が上がる。それでとくする者もいるだろうが、こまる者もいるだろう。


承知しょうちしております」


 執事しつじはポーカーフェイスでうなずいた。昨夜の流れ星で、かなりの被害ひがいどころか、王家のはたけにあったカボチャが「全滅ぜんめつ」したことはだまっておく。


 市場でのめ、それに近いことをしなければ、必要な量のカボチャを確保かくほするのは無理だった。


 貴族きぞくたちの中には、カボチャの高騰こうとうひともうけしようと、王家からの買い取り要請ようせいていことわっている者もいる。カボチャを使う目的が「舞踏会ぶとうかい料理おもてなし用」なので、こちらとしても強くは言いにくいのだ。


「十分な量のカボチャを用意できなくてもかまわんぞ。事情が事情だしな。他の野菜、たとえばナスやピーマンの料理でおぎなえばいい」


 だが、そう口にしながら王子は思う。


 すでにカボチャを大量に買っているだろうし、今からでは調理場ちょうりば都合つごうもある。もっと早くに情報じょうほうを得ていたら、有効な手をてたのだが・・・・・・。


 市場でカボチャが高騰こうとうしていないことを、本気でいのるのみだ。こんなことで国民のいかりを買って、一揆いっき革命かくめいを起こされたくない。末代まつだいまでのはじになるどころか、最悪の場合、自分が最終王子になってしまう。王家の歴史のラストページ。


 また、今夜の舞踏会ぶとうかい結果けっか次第しだいでは、別の形のラストページになる可能性も・・・・・・。


 そんな不吉ふきつな想像を、王子は強引ごういんにふりはらうと、


「で、流れ星の方は何かつかめたか?」


「まだ調査ちょうさちゅうです。ただ、自然しぜん現象げんしょうではなく、人為じんいてきなものである可能性が高いかと」


「やはりか」


 昨夜の流れ星については、変な色をしていたという話も聞いている。


 人為じんいてきなものとなると・・・・・・


「一番ありそうなのが、リチャードの仕業しわざか。あいつなら、こういうことをやりかねない」


 そう言って王子はニヤリと笑う。


 リチャードは隣国りんごくの王子だ。自分とは同年代どうねんだいいライバル。


 リチャードから先ほど手紙がとどき、「今夜の舞踏会ぶとうかいかならず参加してやる」と書いてあった。まるで犯行はんこう予告よこくだ。


 しかし、今夜の舞踏会ぶとうかいには重要な目的がある。この国の王子として、結婚けっこん相手あいてを決めるのだ。


 そして、リチャードはおんなき。だから、今夜の舞踏会ぶとうかいにはばなかったのだが・・・・・・。


「来ると思うか?」


 期待きたいしながら王子は言う。


「来るでしょうね。こういうことにはえる御仁ごじんですから」


 執事しつじはため息をつくと、


「カボチャばたけの流れ星、あれがリチャード王子の仕業しわざなら、すでにこの国に入りんでいることになります。王家のカボチャばたけの近くには、もういないでしょう。おそらくは、このしろの近くに来ているかと。めだたないように、単独行動している可能性が高いです」


「そいつは厄介やっかいだな」


 王子は楽しそうに言う。


 とはいえ、「まねかれざる王子リチャード」によって、舞踏会ぶとうかいをぶちこわされるわけにはいかない。


 そもそも、リチャードには『招待状しょうたいじょう』を送っていないのだ。このしろに普通に入ろうとすれば、門前もんぜんばらいを食らう。


 そのあとおそらく、強行きょうこう突破とっぱしようとするだろうが、それも無理だ。


 今夜の舞踏会ぶとうかい招待客しょうたいきゃくたちの中には、戦いにひいでた者たちもいる。


 その一人が現在、自発的に門の警備けいびくわわっているのだ。


「いくらリチャードでも、あの『先生』を突破とっぱすることはできない」


 王子は自信満々にげる。


 しかし、少しだけ期待きたいしていた。こういう時のリチャードは、こちらの予想を平気で裏切ってくることがある。


 たとえ、『先生』の一人が相手でも、あのリチャードなら・・・・・・。


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