Σ(゜д゜lll) カボチャが値上げ、怒りのシンデレラ
二度見する。それで十分だった。
見間違いではない。カボチャが値上げしている。これは紛れもない事実。頭の中に描いていた値段とは、大きくかけ離れていた。
スーパーの野菜コーナーで、シンデレラは呆然と立ちつくす。
目の前のたなには、十個以上のカボチャがあった。これ一個買うのでさえ、今の所持金では足りない。
嘆いてみるものの、それでカボチャの値段が下がるわけではなかった。
近くにある他の野菜に目をやる。ナスの値段は普通。ピーマンの値段も普通だ。カボチャだけが高騰している。
(どうしよう?)
シンデレラは考えた。どうしてもカボチャが必要なのだ。手ぶらで帰るわけにはいかない。
実は今、家に魔女が来ている。
カボチャを手に入れてくれば、素敵な魔法を使って、お城の舞踏会に連れて行ってくれるらしい。こんな幸運、人生に一度あるかないかだ。買ってもいないのに、宝くじの一等が当たったようなもの。
それでシンデレラは、ほんの少し前まで浮かれていた。
――私、お城の舞踏会に行けちゃうんだ♪
なのに、野菜コーナーで現実を突きつけられてしまう。おお、なんてことだ。カボチャが値上げしている。異常な高騰。おさいふが完全に戦意喪失している。
シンデレラも心が折れそうだった。
けれども、必死に踏みとどまる。嫌だ、舞踏会に行くのをあきらめたくない。
そこで神さまに祈ってみる。どうかカボチャの値段を今すぐ下げてください。私の手が届く値段に。
しかし、効果はなかった。カボチャの値段も、おさいふの中身もそのままだ。
シンデレラは頭を切り替える。宗派を変更。別の神さまに祈ってみる。どうかカボチャの値段を今すぐ下げてください。
しかし、効果はなかった。
シンデレラは決断する。神さまに頼るのはあきらめた。
魔女の言葉を思い出す。
――家にカボチャがない? じゃあ、買ってきて。まるまる一個ね。ゲームでもしながら待っているから。
そういうわけで、手ぶらでは帰れない。何が何でもカボチャを手に入れないと。
(私は必ず、お城の舞踏会に行くんだ!)
これは人生で一度きりのチャンスかもしれない。絶望のまま立ち止まっていても、現状を変えることはできないだろう。
だから、シンデレラは怒ることにした。
それを前に進む原動力にする。怒りの力で限界突破だ。
(ここ以外にもスーパーはある!)
このスーパーはカボチャが高すぎる。だったら、他の店に行くまでだ。
スーパーを飛び出すと、空は夕暮れだった。夜が近い。急がないと、舞踏会が始まってしまう。
この近くで、カボチャを売っている場所は三つあった。安そうな店からあたってみよう。
シンデレラは怒りの走りを続けながら、心の中で叫んだ。
(私はカボチャを買うのを、絶対にあきらめない!)