第97話 発表会③ 燃え盛る嵐の前の静けさ
それから発表は滞りなく進んでいく。アーネストの発表に感化されたのか、力の入った発表が続き、エルディン先生もにこやかに発表者を見守っている。私もこの空気感に温かさを感じ、気持ちが浮つき、傍に置いてある三角帽子をいじる。
そうして何人かの発表が終わった時、なにやら後方の方でざわざわしていることに気づく。私は気にしないようにしていたが、アーネストに肩をつつかれる。
「アルマリア、後ろ」
「ん?」
促されるままに後方を見ると、そこには腕を組み、私たちを見下ろしている純潔一族が一人、そこに立っていた。つい先日、あの校舎を破壊した張本人。
「えっと、見たことあるけど名前が分からないや」
「ほんと、貴様は純潔一族を舐めてるな。おいアーネスト。教えてやれよ」
「……アルマリア。ついこの前にあったことがある純潔一族だ。グラノルスだよ」
「ああ、ジークと校舎を壊した人」
「厳密には俺もあいつの魔法攻撃でやられたからあいつが壊したと言っても過言じゃないぞ」
「確かに! ジーク負けたんだっけね!」
「……エルヴィラはもう少し言葉を選べ」
グラノルス・シルウェリウス。炎属性を操り、従属一族の生徒たちを使って私たちを攻撃した人だ。もしや今日も襲ってくるのだろうか。
「えっと、それで、何か用?」
「いや、ただ、しっかりと見ておきたいと思って来ただけだ。あの人数を一瞬にして気絶させた、貴様の実力をな」
それだけをいって、 グラノルスは離れていってしまった。なにやら何か企んでいそうな、色々な意味を含んだ言葉を残して。
そしてその時、私の名前を先生から呼ばれ、気付く。次は私の番になっていた。私は発表の場へと視線を戻し、三角帽子をかぶる。エルヴィラ達に応援されながら、私はその発表の場へと向かったのだった。そこがすぐに、戦場へと変わることも知らずに。