第85話 優しさとは
「何してるも何も、ジークを探しに来たんだよ。元の場所に戻ったらいないしさ。心配したよ」
私とイヴリンはジーク達の前に歩み寄る。ジークは真顔でいるが、少しだけ柔らかい雰囲気を纏っている様子だ。フィオレは私の顔をチラチラと見て、私が視線を向けると顔をそむける。
「フィオレが回復魔法をかけたんだよね。流石は植属性の天性だね」
「そんな、大したことは、してないよ。えっと、私、そろそろ帰るね。ジーク、今日はちゃんと寝てよ」
フィオレは足早に去ろうとする。そんな彼女の背中に、ジークは声をかけた。
「フィオレ。ありがとな」
「……うん」
フィオレは振り返らずに声だけで返事をして、その場を去った。その背中は少し寂しそうに見えた。
「フィオレ、アルマリアがいるとすぐに離れようとする。小学部でも一緒に遊ぼうとしても頑なだったな。仲悪いのか?」
「私は仲良くしたいんだけど、避けられてる気がするんだよね」
「あいつ、優しいし人を嫌わないタイプだと思ってるんだがな。思い違いなのか」
なんとなく私は原因については察してはいるが、根拠がないので表に出さない。恐らく彼女も表に出さないだろう。表に出るまでは原因不明ということでやっていくつもりだ。
「じ、ジークの怪我は、大丈夫?」
「ああ、イヴリン。フィオレの回復魔法で傷の対応はしてもらった。後は痛みが引くまで我慢だな」
「我慢、大変そうだね」
「大丈夫。痛みには慣れてるさ」
フィオレの回復魔法は大人顔負けの技術だと聞いている。それも恐らく、ジークに対してだけの効果なのだろう。