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第84話 大好物
「アルマリア、あの、ジークと一緒にいる人って、誰?」
彼らのやり取りに気を取られ、イヴリンが控え目に私の袖を引っ張って我に返る。イヴリンは不思議そうな表情を私に向け、質問していた。
「彼女はフィオレ・ムーンフラワーって人だよ。小学部はジークとは違う学校にいたんだけど、家が隣同士でね。いわゆる幼馴染かな」
「随分親密にしてるけど、もしかして付き合ってるの? 幼馴染カップル? 中学部1年次の1学期のこの時期に? 何それ私の大好物なんだけど」
「イ、イブリン? 落ち着いて、ジークが言うには、付き合うとかじゃないって言ってるよ」
「それほんと? 絶対何か隠してるよ。だって、今だってあんな体密着させちゃって、回復魔法かけるためとは言ってもあれはもう完全に……」
どうやらイヴリンは恋愛話が大好物のようで、小声でまくしたてるように言いたいことを言っている。その雑音が聞こえたのか、背後から私たちを呼ぶ声が聞こえた。
「アルマリアとイヴリン、何してるんだ?」
ジークとフィオレは、怪しそうな人を見る目で私たちを見ていた。