第81話 野次馬
私たちが校舎へと戻ると、そこには溢れんばかりの人が集まっていた。大衆の視線は当然、破壊された校舎の壁に向けられている。すでにグラノルスとジークの姿はそこにはなく、生徒会の人たちが調査のためか色々と物色している姿が見えた。
「流石にこれはやり過ぎましたね。いくら純潔と言えど、社会からの批判は出てきますよ。まあ、批判だけで終わるんですけどね」
「マジでやばいことしてんのにお咎めなしだもんね! 権力と社会的地位があるってそんなに偉いんかって感じよ」
メーヴィスとオズマンドは呟く。純潔一族はこのレベルの破壊行為をしても裁かれることはないようだ。いかにエルヴィラやレティシアさんが純潔一族の中でも珍しい人たちなのかを実感する。
「あ、アルマリア」
そんな時、私を呼ぶ声が聞こえる。見ると、人混みの中からイヴリンがちょこんと出てきてヨタヨタと近づいてきていた。私は控えめに手を振り、彼女を迎える。
「あ、あのね。なんか、あそこで喧嘩があったみたいで……」
「知ってるよ。純潔の人間とジークがやったんだよ私たちもその場にいたんだ」
「そ、そうだったんだ。大丈夫だった? 怪我、してない?」
「大丈夫だよ。私たちはね。ただ、ジークが心配。イヴリンは彼の事見かけた?」
「うーん、見かけてない、かな。私が来たのは人込みが出来た時くらいで、その時にはもうあそこに誰もいなかったよ。探しに行く?」
「そうだね。オズマンドとメーヴィスも一緒にジークを探してもらえるかな」
「当然じゃん! あたしだって心配だし、オズだって心配してるに決まってるし!」
「メーヴィスに決めつけられるとなんだか釈然としませんが、確かに心配はしてますし、探しましょう」
そうして私たちは、手負いであろうジークを探すことにした。