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第7話 空に近づくアオハル

手元には紅茶とチョコケーキが置かれている。心地よい香りが私の鼻をくすぐる。そして、私の前には、授業中にナンパをしてきたオズマンドと付き添いのメーヴィスが座っていた。二人はしばらく紅茶を飲んでいた。

 オズマンド達にカフェに誘われた後、魔法学演習は問題なく進んだ。途中で純潔一族からの視線を感じたが、特に絡まれることはなく、今日の授業はそれで終わった。そして放課後になり、オズマンドの誘いを受けることにしてカフェに来たのだった。

 なぜカフェに呼び出されたのか、目的が読めず、柄にもなくそわそわしてしまう。なので、ちらちらとエリヴィラたちの方に目線を移してしまう。エルヴィラとジークはカフェに誘われたことを言った時、面白そうだけど邪魔をしたくないとのことで、離れた席に座って様子を見ると言うことで勝手についてくることになったのだ。今も二人はにやにやと私の方を見ている。そんな二人を少しにらんだ時、オズマンドがやっと話し始めた。


「急に呼び出してしまって申し訳なかったです。クラスで自己紹介はしてますけど、念のため改めて自己紹介を。わたしはオズマンド・ヒンデンブルクと言います。純潔ではないですが、長い歴史をもつヒンデンブルクの人間です」

「そんで、あたしがメーヴィス・ファインハルス。同じく長めの歴史を持っているファインハルスの一族の人。ま、あたしはそんなん気にしてないんだけどね。オズとは一族ぐるみの付き合いなんだわ。よろよろ~」

「よろしくお願いします」

「あ~ため口でいいよ別に。オズみたいに堅苦しいのは苦手だから」

「そっか。それじゃあ遠慮なく。それで、私をカフェに呼んだのは何か理由でもあるの? デートにしては人数多い気がするけど」

「残念ながらデートが目的ではないんです。今日アルマリアさんが使った魔法につて、色々と聞きたいと思いまして」

「ほら、なんかアルマリアの番になった時に急に天気かわったじゃん。あれって、アルマリアがやったことなのかなって思ってさ」

「ふーん。ちなみに、なんで気になる? 二人もああいう魔法使いたいとか?」


 私は少し警戒しながら二人に問いかける。まさか本当に警戒する時が来るとは思っていなかった。両親から言われていたことが、今になって急に頭を巡り、心臓が数回ドキリと跳ねる。


「いえいえ、自分たちが使いたいとか、そういうのではなく、単純な好奇心ですよ。例えば、この世で希少な天性属性の一つと言われていて、属性魔法において最強の一角とされる、空属性なのかもと思ったり、ね」

「あたしは強いとか珍しいとかそんなこだわるつもりないけど、でも使える人がいたらやっぱり気になるじゃん。友達になって、学校行きたくない日に大雨にしてもらったりしてもらるじゃんってね」

「大雨で休みになる学校なら良いね。でも、私たちの学校ってそんな甘くないと思うけどね」

「ええ確かに。それで、アルマリアさんの天性属性は、空属性なのですか」

「……正直、分かんない。先生にも言ったけど、自分がなんの天性属性を持っているのか、分からないんだよね。でも、そうだな。空属性だったらいいな。私、空のこと好きだからさ」


 私はいつものように嘘をつく。物心ついたころから両親に言われ続けた日常を、今回も繰り返す。正直に生きていたいと思う私でも、このことについては例外になる。私の言葉を聞いた二人は、特に疑いの目を向けるでもなく頷き、続けた。


「そうですか。まあそうですよね。一般的にも、中学部で天性属性が判明する人たちも多いですし。でも、少なくともアルマリアさんの持つ魔法の技術には興味をそそられるのです。なので、これからもいろいろお話を聞いても良いでしょうか?」

「全くオズは固い言い方しかしないんだからさ。友達になりたいって、そういえばいいじゃん。ねね、あたしもアルマリアと友達になりたいな。実は入学式当日から近づきたいねって、二人で話してたんだよね。正直、内のクラス純潔ちょっと多いし、あたしたちは純潔苦手だし、向こうも見下してくるから、居心地悪いんだよね。お願い!」


 そう言ってメーヴィスは両手を合わせて頭を下げる。オズマンドも話し方に似合わず、メーヴィスの所作を真似る。真正面から友達申請の宣言を受けるのはなんだか新鮮で、私はついふふっと笑みをこぼす。


「全然いいよ。むしろ私も小学部の友達しかいなかったから、中学部からの友達が欲しかったんだ。これからよろしく、オズマンドとメーヴィス」


 私は笑顔でそう答える。言葉を聞いた二人は顔を上げて一緒に笑顔になる。そうして、紅茶とケーキがなくなるまで二人と世間話をして交流を深めていった。時折エルヴィラとジークの方に視線をやると、二人も笑顔で私の方を見ていた。そうして、私は中学部で初めての新しい友達を作ることが出来たのだった。私の中学部のアオハルは、少しづつ色づき始めていた。


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