第77話 文化の炎
重苦しい空気に私は息をのむ。グラノルスと名乗る純潔一族は一般人狩りの獲物を私たちだと言い、その表情は明らかに笑ってない笑みを浮かべていた。笑顔で誤魔化せないほどの怒りを抱えていると見える。
「純潔一族っていうのは血の気が多い人が多いね。入学式の日にもなんかいたけどさ。純潔一族だからなんでもして良いって思ってるなら人として終わってるよ」
「純潔に歯向かう方がこの国じゃ人として終わってんだよ。なんだ、まさかお前、最近この国に来た移住民かよ。なら丁度良いな。この国の文化と社会常識を叩き込んでやる」
グラノルスはそう叫ぶと肩に乗せていた炎属性の鳥は翼をはためかせる。熱風が私たちを通り抜け、道を塞いでいた男子生徒たちも戦闘態勢を取った。
(血の気の多い純潔一族は人の話しも冷静に聞けないのかな)
「メーヴィス。準備はどうです?」
「オズ、もうやってるし。でもあいつ、シルウェリウスの奴っしょ? 防ぎきれるかな」
「ま、実践で試してみるのも良いでしょう。アルマリア、私の後ろに」
オズマンドとメーヴィスはすでに魔法の準備をして迎え撃つ気満々でいた。メーヴィスの重力属性魔法はすでに反対側の通路にいる男子生徒たちの体を捉え、動かせないように牽制していた。オズマンドは最近魔力制御の自主練習をしていたようで、水属性小魔法による小中様々な魚を作り出し、自身の体を周遊させ、魚群の盾を作っていた。
その時はすぐに始まる。
グラノルスは肩の鳥を拳に移動させ、その鳥の飛翔で一気にこちらへととびかかる。オズマンドの魚群がオズマンドから離れ、前の方で回遊して盾となる。そして、炎の鳥と水の魚群は衝突した。一瞬にして水蒸気が私たちの視界を遮り、周辺状況が分からなくなる。私はすぐに風魔法を発動しようとしたが、発動前に煙からグラノルスの怒りの顔が飛び出て来た。彼の魔法は勢いが死んでおらず、オズマンドへと一直線に飛ぶ。
(やばい!)
私は風属性の魔法弾を発動した。その瞬間、背後から誰かが飛び出してくるのを感じた。その誰かは私を越え、オズマンドの前に拳を振りかぶりながら出て来た。
「ジーク!」
「伏せろ!」
ジークの拳に発動された炎属性の獅子の拳は、グラノルスの炎の鳥と激突する。その激突に私の風魔法が炸裂し、そして凄まじいほどの大爆発を引き起こしたのだった。