第75話 正義の在り方
「生徒会に入ってほしい、ですか」
私は聞き返す。生徒会長のフレッドは私の問いに重く答える
「一言で言えば、君たちの態度が生徒会に必要なんだ。純潔一族はこの国だと完全に上の存在、貴族だ。彼らに歯向かうことは社会的か物理的かの抹殺に値する。普通は彼らの行動に注意することは出来ない。でも、ここは学校だ。それも、騎士を目指す学校だ。それなら、普遍的な正義に必要な ”声掛け”は最低限でもするべきだと思うんだよ。今のところ、生徒会のメンバーでその声掛けで出来るのは多分、ここにいる自分たちだけ。立場的にも他のメンバーは何も言えないんだ」
「それで、さっき私たちがあの純潔に物申していた場面を見て、勧誘しようと思ったんですね」
「そういうことだ。例年だったら純潔一族がこの騎士養成学校に入る人数はそう多くないけど、今年からは多くなったから、より必要性が出て来たんだ」
熱弁する彼の言葉に同調するように両隣の生徒会メンバーは頷く。彼らの願いは切実のようだ。だからこそ、返答は早い方が良いだろう。
「生徒会に入ってほしいという言葉の理由は分かりました。でも、少なくとも私は生徒会に入る気はないです。オズマンドとメーヴィスはどうかな?」
「残念ながら、私もないですね」
「あたしもやる気ないし、入ってもなんもやんないと思うわ」
私たちの想っていることは、多分同じかもしれないが、私は自身の気持ちを伝えることにする。
「私はそもそもそういう組織に縛られた行動をするのはあまり好きじゃないんです。なので、仮に生徒会に所属しても、さっきのような行動はむしろ出来なくなると思います。私がこの学校にいるのも、何となく旅人になった後に生きていける術を学べると思ったのと、学校は出ときたいというシンプルな考えなだけなんです。なので、少なくとも生徒会長が期待しているようなことは、私には持ってないんです」
フレッド生徒会長は静かに私を見る。怒ってはいないが、少し険しい表情をしている。そして、彼は私の言葉に答えた。
「そうか……非常に残念だけど、無理強いするつもりは自分はないよ。分かった、済まなかったね。急に呼び出して、急にこんな勧誘してしまった。いずれお詫びさせてほしい。これで終わりにしよう。――そうだ、最後に改めて君たちの名前を聞いて良いかな?」
私たちはそれぞれ自己紹介をする。そして、そのまま出口の方へと案内され、この騒動は一旦の落ち着きを見せた。
この出来事が、のちに一騒動を引き起こす引き金になっているとも知らずに。