第72話 闇の遭遇
声のする方へ向かった私は目にしたのは、男子生徒2人に体を掴まれ逃げることが出来なくなっている女子生徒と、その女子生徒に近づこうとしていた男子生徒だった。状況的に見るのなら、近づく男子生徒は恐らく純潔一族の人間だろう。
女子生徒は大声で助けを呼ぶが、私以外に誰か来るような様子は今のところない。
「ふん。そう喚くなよ庶民。嫌がることじゃないのによ。純潔一族に声をかけられ、協力を要請されるってだけで名誉あることだってのに」
彼の言葉に続けて、従属している男子生徒2人も全面的に肯定意見を出して女子生徒を見下す。その状況に、女子生徒はもはや声を出すことも出来ないほどに絶望している様子だ。純潔の男子生徒はにやりと笑い、その手には炎魔法が発動され、女子生徒の顔へと近づけていく。
私は心の中で何かが切れ、気付いたときには水魔法を発動していた。発動した水魔法は小さな球となり、高く打ち上げ、上空からその純潔の男子生徒の炎魔法へと落とした。その男子生徒の手はびしょぬれになり、男子生徒は何が起きたのかすぐに理解できていない様子だった。
「その子、放してあげなよ」
私は声を上げながら、彼らへと歩み寄る。こちらに気づいた純潔の男子は、女子生徒を捕まえている従属の生徒たちに目配せする。その合図を見た従属の男性生徒たちは、掴んでいた女子生徒を突き放しこちらへと駆け出した。その拳は握られ、明らかに殴る準備をしていた。
私も迎撃のために風魔法を準備したが、それは発動することはなかった。
私の後方より水属性の大型回遊魚が飛来し、男性生徒たちを突進により弾き飛ばした。後ろを見ると、オズマンドとメーヴィスがそこにいた。メーヴィスは重力属性魔法を発動し、男子生徒たちに捕まっていた女子生徒を引き寄せ、私たちの傍に避難させる。
「二人とも、ありがとう。助かったよ」
「いやいや、当然のことしただけだし!」
「本当にアルマリアはすごいことしますね。純潔一族相手に喧嘩吹っ掛けるなんて、この国の常識では考えられないですよ」
二人が私に隣まで来たことを確認し、私は再び純潔の男子生徒へと視線を向ける。彼は非常に強い怒りを抱え、私たちの方を睨んでいた。そして、問答無用で炎魔法を発動しようとしていた、その瞬間、私たちの間に介入する大声が聞こえた。
「君たち、そこまで!」
声の方を見ると、明らかに上級生である男子生徒2人に女子生徒1人、計3人が、こちらに来ていた。彼らの左胸には彼らの所属を証明するバッジが付いてある。そう、彼らは、生徒会だった。