第68話 新入部員
翌日の放課後は青空が流れ雲が一つもない快晴。私は部室に寄らずにそのまま屋上のベンチに座り、空を眺めて風を感じていた。皆は部員を増やす方法を模索するらしく、私も普通に部室に行こうとしたが、エルヴィラが「今日はすごく天気が良いからマリアは屋上に行ってのんびりして」と、半ば強引に屋上に連れて来られたのだ。エルヴィラがそう言うのならと言葉に甘え、こうしている。
「こんにちは、アルマリアさん」
昨日ぶりの声に、私は視線を動かさず、声だけで応じる。
「なんとなくそうだと思った。イヴリンの運命属性の魔法って、本当にすごい力だと思うよ」
「え、えへへ、すみません、どうしても、お話をしたくて」
イブリンが隣に座るのを感じ、私はそこで視線を彼女に向ける。彼女は柔らかい笑顔を私に向け、話しを続ける。
「その、昨日は本当にありがとうございました。わたし、戦うのが本当に苦手で、人に頼らないと何も出来なくて、昨日来てくれたのがアルマリアさんで本当に良かったです」
「あれくらい大したことないよ。でも、運命属性を使えば一人でもなんとか出来たんじゃとは思ったけどね」
「あはは……その、逃げ切ることは出来ても、ああいう風に撃退することは出来なかったです。ああいう人たちは痛い目を見ないと何回も来ますし、逆に一回でも痛い目を見れば、そんな大きな組織じゃない限りはもう来ないです」
「ふーん。それは、カン?」
「親からの教えと、何回かの実体験をもとに考えました」
「そっか。なるほどね」
私たちは少し静かになる。イヴリンは何かを言いたげにもじもじとしているため、私は彼女の言葉を待つ。
「あ、あの!」
「うん」
「その、わたし、もっと、アルマリアさんの、近くに居たくて……」
「うん?」
「あ、えっと、変な意味じゃないです。その、確か、アルマリアさんって、仮部活を今してるって、噂を聞いてて」
「ああ、天文学部ね。まだ正式復活してないんだ。なんか、部員があと一人いないみたいでさ」
「だから、わたし、その部活に入っても良いですか?」
「え、ほんと? それは嬉しいけどさ。イヴリンは空とか眺めるの、好き?」
「好き、と自信を持って言えるわけじゃないです。でも、わたしも、暇なときとか、気付いたら空を見てるから……えっと、これだけだと、入っちゃだめ、ですか?」
「いやいや、全然問題ないよ。ありがとうイヴリン。それなら、入部届とか――」
「もう作ってます。なので、もしよかったら、一緒に部室に行ってくれませんか?」
彼女は必死になって上目遣いで私を見る。意図的なのか分からないが、身長の低い彼女の淡いオレンジっぽい瞳で見られると、なんだか断れない。断るつもりもなかったが。
「よし、それじゃあ、部室行こうか。ついでに部員も紹介、っといってもみんなクラスメイトだから知ってるか」
そうして、私は新たな部員を連れて、部室へと向かうのだった。