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第67話 煌めく空に想い馳せ

 歓楽街を抜け、住宅街に続く通りを走る。そして途中にあった公園に一度入り、足を止めた。

 大きく口を開け、息を整える私と、ベンチに座り込み、俯きながら息を整えようとするイヴリン。私は少しして落ち着いたが、イヴリンはまだ辛そうにしている。


「えっと、イヴリン、大丈夫?」

「…………ぅぅ」


 私がイヴリンの背中をさすろうとした瞬間、彼女は嘔吐した。私は驚き、すぐに彼女に駆け寄る。


「ご、ごめん、無理させちゃったね……」

「い、いえ、謝らないでください。この程度で弱る病弱な自分が悪いんです……」

「病弱体質だったんだ……ほんと、ごめん。ちょっと待ってて。水を出すよ」


 私は手のひらに水属性を発動し、球体にして出現させる。意識を集中し、口当たりの良い水質になるようにイメージしながら、出来る限り飲みやすい水にして、その球体を一口大に分離しながら、彼女の口に運ぶ。イヴリンは素直に口を開け、少しづつ補水をする。

 球体を全て飲み干し、水属性魔法で吐しゃ物を洗い流して、私はイヴリンの隣に座る。彼女はやっと落ち着いたのか、背もたれに寄りかかり、夜空を見上げていた。


「わたしは、生まれながらに体が弱いみたいなんです」

「そうだったんだ。ほんと、ごめん。無理させて走らせちゃった。なんなら私の顔に吐いてもらって良かったよ」

「い、いやいや、全然気にしてないですよ。アルマリアさんは悪くないんですから。むしろ、こんな弱い体の自分自身に、イライラするんです。これじゃあ、旅人にも、騎士にもなれないですよ……」

「やっぱり、イヴリンも旅人か騎士を目指してるの?」

「……まあ、候補の一つって、感じです。多分わたしはこの国の研究競争社会には合わないから。蹴落とされる人なんです。だから、自由を生きる旅人か、一定の立場で守ってもらえる騎士じゃないと、社会で生きていけないんです……」


 私も一緒に空を見上げる。果てしない空は自由に、勝手に煌めく星々が眩しい。


「まあ、今その二つを目指そうと思ってるだけ立派だよ。私は何になりたいとか、全然ないからさ。まだ中学部になったばかりだし、何になりたいかはこれから決めようと思ってるんだ。でもね。これだけは譲れないものってあるんだよ」

「……そ、それは、なんですか?」

「空と一緒に生きていたい。私は空を眺めるのが好きなんだ。夜空も、青空も、雨空も。何になるにしても、その空と生きたいんだ。ま、それを実現できるのって、結局旅人しかないんだと思うけどさ」


 私たちはそれ以降言葉を交わさず、ただ静かに夜空を眺めていた。夜の涼しい風が私たちの頬を撫で、私たちのことを慰めているような、そんな気がした。

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