第66話 白の爆弾
イヴリンは両手を握り、祈るようにして目を閉じ魔法を発動する。彼女の足元に運命属性の魔方陣が出現し、仄かに紫色に発光する魔方陣に彼女の体が照らされる。少しして、彼女は目を開く。
「こ、これで、わたしを追っている人たちはここに来る運命になって、大きく隙を作ってしまう運命になりました。多分……」
「分かった。それじゃ、準備するよ」
私は無難に風属性の魔法を準備し、いつでも発動できるようにする。そのすぐあと、イヴリンが言っていたように、いかにも怪しい男たち3人が、広場の方へと入ってきた。彼らはイヴリンを見るや否や、うるさく喚く。
「てめえ、見つけだぞ! 大人しく捕まりやがれ! お前ら行くぞ!」
リーダーっぽい男が輩2人を連れて私たちへと駆け出した。未だ隙を見せるような雰囲気はない。
「イヴリン、本当に大丈夫なんだよね?」
「だ、大丈夫、大丈夫。あ、来ました」
イヴリンが向けた視線の先には、大きい鳥3羽が、ちょうど男たち頭上を飛行した。そして、その頭上から鳥の白い爆弾、つまりはフンを、男たちの頭を爆撃し、離脱する。
「うお、なんだ?」
「鳥のフンだこれ! うえ、くっせー奴だこれ!」
明らかに意識外から来たトラブルに、男たちはひるんでいる。
(なるほど、こういうことね)
私は準備していた風魔法を男たち3人に放つ。螺旋運動をしながら飛来する風属性の魔法弾は3人の男たちの顔面を捉え、弾き飛ばす。吹き飛ばされた男たちは頭から地面に落ちた。
私はイヴリンの手を握り、駆け出して地面に寝ている男たちを飛び越えて大通りの人込みにまぎれたのだった。