第64話 クラスメイトのお願い
「えっと、アルマリアさん、こんばんは」
その少女は私の名前を呼び、控え目な笑顔を私に向ける。私は見覚えがあまりない人だったため、すぐに反応が出来なかった。
「あれ、もしかして、覚えてない? その、同じクラス、なんだけど……」
「同じクラス……ごめん、あんまり覚えてないんだ。多分、自己紹介の時もぼうっとしてたから、その、気を悪くさせてごめん」
「ああ、いえいえ、大丈夫です。それじゃあ、改めて自己紹介しますね。わたしはイヴリン・ベネトルケと言います。特になんの特徴もない一族なので、目立たないのは仕方ないですね。特に今年は純潔一族が多いと聞きますし……」
「イヴリンね。改めてよろしく。私は――」
「大丈夫です。知ってますよ。アルマリアさん」
「ああ、そうだったね。私の自己紹介はちゃんと覚えてくれてたんだね。ありがとう。それで、イヴリンも夜散歩でもしてたの?」
「え、ええ、そうですね。そんな感じです。でも、ちょっと助けてほしいことがあって」
「助けてほしいこと? 誰かに追われてるとか?」
ほぼ冗談のつもりで言ったのだが、私の言葉を聞いて彼女は静かに頷く。そして、彼女は私の手を引っ張り、歩き始める。私も彼女の後方に位置取り歩く。
「実は、私の天性属性を狙って、悪い人たちに目を付けられてしまって。今も追われてるんです」
「そうだったんだ。もちろん力になるよ。あんまり戦闘得意じゃないけど」
「そんな謙遜しないでください。アルマリアさんの実力は結構広まってるんですから。魔物の群れの襲撃を撃退したこと、結構広まってます」
「ああ、そういえばそんなことあったっけ」
(ちょっとやりすぎたな)
「なので、ちょっと手伝ってほしくて。一緒に悪い人たちを撃退したいんです。お願いできませんか?」
「それは大丈夫だけど、出来るかな?」
いくら魔物の群れを撃退したと言っても、人と魔物ではやはり勝手は違うはず。そう上手くいくものだろうか。私の疑問に、彼女は弱弱しい声で、自信満々にこう言った。
「大丈夫です。わたしの天性属性は、運命を操りますから」