第59話 あと少しの真実
「今のアルマリアの魔法は、ただ風魔法を撃ち出しようには見えなかった。自然に起きたはずの強風を使って発動したように見えた」
「……まあ、たまたまそう見えただけじゃない? そもそも、私のその属性について議論することに意味ってある?」
「意味はない。ただ、僕の好奇心と疑念を解明したいだけだ。あの日、アルマリアに敗れた時のあの魔法。あれはただの属性魔法なんかじゃない。魔法同士のぶつかり合いには必ず魔力の衝突があるが、あの時にその衝突はあまり感じられなかった。それは、つまり――」
「自然界に発生する現象に近い力だった、と言いたいんだろ」
ジークがアーネストの言葉を遮り、言葉をかける。
「ああ、そうだ。自然発生した現象は魔力を用いた防御はほぼ通用しない。大自然に対して結局人間は無力だってのは一般常識だ。そして、僕はあの時感じたこと……」
アーネストは一呼吸置き、続ける。
「アルマリアの魔法はその自然現象そのものに近いものなんじゃないかってことだ。そして、僕はあの屋敷にあった文献で、それに近い属性の記述を、たった一度だけ見たことがあるんだ。もしかして、アルマリア、君の天性属性は……」
彼が核心的なことを言うその瞬間、近くで恐ろしい魔物の方向が鳴り響く。急な大音量の雄たけびに驚いた私たちはその声の方向へと目を向ける。すると、茂みの奥から、先ほど倒していたリザードマンの下位種よりも体つきがしっかりとして、よく切れそうな剣と重々しい盾を持ち、鋭い眼光をこちらに向けるリザードマンがいた。