第55話 いつもと少し違うお昼時間
今日の授業は退屈だ。興味のない座学を延々とこなす曜日で、私だけでなく、クラスの誰もが退屈そうな目を、していると思ったが、意外にもしっかいと授業を受けている子たちが多く、密かに孤独感を覚える。このクラスにいる子たちはほとんどは純潔一族を信仰し従属してきた血族なんだと、前にエルヴィラから聞いた気がする。つまち彼ら彼女らが勉強するのは、この国と純潔一族のためなのだろうか。他人のためなら勉強出来るのは、それはそれで才能だと思うが、活かせる場面が限られるのはもったいないように感じる。
そういうことで、クラスメートたちが真面目に授業を受けている中、私はあくびをかみ殺しつつ、窓に目を移し、流れる空を見ていた。
「――。マリア!」
いつも聞いている元気な声が聞こえ、私はふと我に返る。気づくと授業は終わっており、昼時間になっていた。ジーク達はすでに教室から居なくなっており、最近見つけた中庭のテーブルの方に言っている様子だった。
「ああ、ごめんエルヴィラ。ぼうっとしてたよ」
「もう、つまんない授業だからって自分の世界に入りすぎだよ! 少しはちゃんと授業受けてる風に見せないと、先生から怒られちゃうんだからね!」
「気を付けるよ。ジーク達はもう行きつけのテーブルに行ったの?」
「そうだよ! やっぱり、同じ境遇からなのか、オズマンドとメーヴィスとは話し合うみたいでね。マリアはお昼、どうするの?」
「いつものように購買にいって、適当に買うよ。エルヴィラは?」
「うん、実は、比較的仲が良い純潔の子たちと今日はお昼に誘われててね。だから、声をかけておいてごめんなんだけど、今日はマリアとは難しいんだ……ごめんね」
「ううん、私は大丈夫だよ。それならほら、私はもう大丈夫だから、行っておいでよ」
「うん、ありがと、マリア! また部活でね!」
そう言って、エルヴィラは教室から出ていった。その背中を見送り、私は購買へ買いに出ていく。いつものように混んでいる購買の人込みをいつものように避け、食べたい物を買い、そして一人の時に行く屋上へと、風魔法を使って飛ぶ。屋上の高いフェンスの頂上に着地して、私はすぐに気づく。いつものベンチに座っている、もう見慣れた人物の姿がいることを。
「なるほどな。ここはお前のお気に入りの場所なのか。悪いな、また僕がいて」
手に持ったサンドイッチを食べながらそう言ってくるのは、純潔一族の中で比較的低い立場になっている、シュプリンガー一族のアーネストだった。